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「沖縄の自己決定」を前面に勝利した玉城氏

沖縄知事選、県民の選択が持つ意味を考える

山口二郎 法政大学法学部教授(政治学)

1 沖縄県民の選択

拡大当選しカチャーシーを踊る玉城デニー氏(中央)=2018年9月30日午後9時35分、那覇市
 自民党総裁選挙で安倍晋三首相が大差で三選を決めた後の最初の大型選挙となった沖縄県知事選挙において、翁長雄志前知事の後継であり、オール沖縄という地域的政治運動に支えられた玉城デニー氏が予想外の大差で勝利した。沖縄県民の選択の意味を考察してみたい。

 この選挙の行方を占う先行事例として、今年2月の名護市長選挙、6月の新潟県知事選挙があった。どちらも事実上、与党系、野党系の一騎打ちの構図となり、与党系が勝利した。どちらも国政に大きな影響を与える選挙として注目を集めた。とりわけ、名護の場合は辺野古での新基地建設について、新潟の場合は柏崎刈羽原発の再稼働について、地元住民がどのような判断を下すかが最大の争点になると全国メディアは報じていた。

 この2つの選挙で与党系が勝利した理由は、そうした国政に結び付く争点を消し、地域経済や雇用を争点に据えた点にあった。逆に、野党系は地方選挙での勝利を安倍政権の攻撃に使おうとしたと受け止められ、中央政治の代理戦争を嫌った地元住民に拒絶されたということができる。私は新潟の選挙には何度か応援に行ったが、地元紙のベテラン記者と議論する中で、新潟県民は大きな政治的影響を持つ選挙での選択を迫られることに疲れていると聞かされて、のこのこ東京から応援に行ったことの浅はかさを指摘された思いだった。名護の場合も、人口6万人余りの小さな市が基地建設という国策に対する戦いの象徴となることは大きすぎる重荷だったと思われる。

与党側がかけた攻勢が裏目に

 沖縄県知事選挙でもこのような構図が繰り返されれば、オール沖縄陣営の苦戦が予想された。私も昨年から何回か沖縄に行き、オール沖縄のブレーン格の学者から話を聞いた。「オール沖縄内部で足並みが乱れ、翁長再選には黄色信号」というのが昨年末に聞いた話だった。知事選では与党側が先に攻勢をかけ、翁長氏の急死もあってオール沖縄側は防戦一方という印象であった。

 しかし、その攻勢が裏目に出た感がある。今回は、知事選挙を全国化し、安倍政権と野党の代理戦争にしたのは政府・与党だったように思える。知名度で先行する玉城氏に対して、政府からは菅義偉官房長官や二階俊博幹事長がたびたび沖縄に入り、業界団体を徹底的に締め付けた。期日前投票で投票した人の名簿を企業ごとにあげさせるという、自由選挙を否定するような手法まで横行した。また、前回の自主投票から与党候補の応援に転じた公明党側では、創価学会幹部が沖縄に入り、徹底した組織動員を展開した。公明党の参議院議員がSNSで玉城氏を「嘘つき」と罵倒したことも目に付いた。

 人気者の小泉進次郎氏を応援に投入したことも、東京や大阪の知事が応援に行ったことも、この選挙が沖縄固有の争点に関する選択の機会であることを無視した中央政府の発想であった。極めつけは、佐喜眞陣営の「携帯電話料金を4割下げる」という公約であった。携帯電話と県政は何の関係もない。菅官房長官が携帯料金の引き下げを求めていたことを受けて、中央と沖縄の密接な連関を印象付けようとした公約だったのだろうが、いかにも県民を馬鹿にした話であった。

 沖縄県知事を中央に従順な人物に入れ替えれば、辺野古の基地建設は淡々と進む。知事選挙ではこのような中央政府のエゴイズムを沖縄県民が受け入れるかどうかが争点となった。政府のこうした上から目線の態度が、知事選挙を全国化した。

沖縄のアイデンティティーを守るという訴え

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筆者

山口二郎

山口二郎(やまぐち・じろう) 法政大学法学部教授(政治学)

1958年生まれ。東京大学法学部卒。北海道大学法学部教授を経て、法政大学法学部教授(政治学)。主な著書に「大蔵官僚支配の終焉」、「政治改革」、「ブレア時代のイギリス」、「政権交代とは何だったのか」、「若者のための政治マニュアル」など。

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