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「沖縄の自己決定」を前面に勝利した玉城氏

沖縄知事選、県民の選択が持つ意味を考える

山口二郎 法政大学法学部教授(政治学)

 これに対して、玉城氏は「沖縄の自己決定」を前面に打ち出して、対決を受けて立った。翁長氏が悲劇的な死を遂げたことも影響して、沖縄のアイデンティティーを守るという訴えは前回のように県民に浸透した。中央のメディアは、基地反対か経済振興かという争点と報じていたが、それはステレオタイプである。翁長県政の時代から、基地が経済発展を阻害しており、基地依存を脱して観光を中心とした地域経済の発展を図るという戦略が、沖縄のアイデンティティーと結びついていた。さらに、玉城氏は沖縄で深刻な子供の貧困に対しても、中高生の通学バス代の無料化という政策を打ち出し、地域の生活を争点化した。

 選挙の結果を見る限り、沖縄県民の意思は明白である。県民が辺野古基地問題を重視して投票したことは世論調査からも明らかである。しかし、玉城氏を選ぶことで本当に基地建設を止めさせることができると信じているのかどうか、私にはわからない。この結果から見えるのは、沖縄の尊厳をないがしろにするものに対する強い反発と、自己決定への希求である。出口調査によれば、玉城氏の最大の勝因は無党派層の7割から支持を得たことであり、ついで自民支持層の2割、公明支持層の3割からも支持を得た。このデータからは、オール沖縄の基盤は維持されているように見える。

 沖縄政治は、イギリスにおけるスコットランド、スペインにおけるカタロニアの地域主義と従来よりも似てきたということもできる。カタロニアの混乱が示すように、その種の地域主義は政治的対立を増幅し、地方自治をむしろ妨げる危険性もある。地域のアイデンティティーに根差した自立志向の政策を展開するというまったく新しい課題に、玉城県政はチャレンジしてほしい。

2 知事選と今後の政局

 沖縄県知事選挙は自治体首長の選挙であるともに、国政にも必然的に大きな影響を与える。自民党総裁選挙の党員投票における安倍首相の苦戦と、今回の沖縄県知事選挙での与党系候補の敗北には共通した構図があるということができる。それは、為政者の過信と権力の過剰に対して、草の根の有権者が厳しい批判を加えるという反発である。

 安倍首相は、敵対する者を完膚なきまでに打ちのめさなければ気が済まないという戦い方を2つの選挙で展開した。自民党の中にはこれに反発する者はごく希少な存在になり、 ・・・ログインして読む
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筆者

山口二郎

山口二郎(やまぐち・じろう) 法政大学法学部教授(政治学)

1958年生まれ。東京大学法学部卒。北海道大学法学部教授を経て、法政大学法学部教授(政治学)。主な著書に「大蔵官僚支配の終焉」、「政治改革」、「ブレア時代のイギリス」、「政権交代とは何だったのか」、「若者のための政治マニュアル」など。

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