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「環境大国」へひた走るフランス

パリの街に登場した空色と白のハイブリッドバス。レジ袋は2年前に廃止

山口 昌子 在フランス・ジャーナリスト

 フランスでは10年以上も前から、「燃費がいい」という理由でタクシーではハイブリッド車が増えたが、最近は自動車メーカーが競って車種を増やしたこともあり、自家用車でもハイブリッド車の愛好者が増えている。

 ユロが環境相時代の昨年9月に発表した、2018年1月1日から実施の排気ガス規制の具体策「気候連帯包括方式」の影響もあるようだ。排気ガスを大量にまき散らす自家用車から排気ガス量の少ないハイブリッド車などに買い替える場合、低所得者を対象に500ユーロから1000ユーロ(1ユーロ約131円)の補助金が支給されることになったからだ。排気ガス・ゼロの電気自動車への買い替えの場合は、2500ユーロの補助金が支給される。

 イル・ド・フランス地方の路線バスは350路線、4700台が走行。年間の利用者数は約11億人だ。ちなみに、パリの地下鉄は14路線、年間約150億人が利用している。バスも地下鉄もパリ交通営団(RATP)が運営している。日本のように都営や市営、民間などテンデンバラバラの経営ではないので、バスの色も統一されている。1枚の切符の価格も同じだ。

 RATPがバスのハイブリッド化に踏み切ったのは2014年。今年2月1日現在、イル・ド・フランス地方のハイブリッド・バス数は800台だ。ディーゼル・バスの製造費は1台約28万ユーロ(1ユーロ=約131円)だが、ハイブリッド・バスは約36万ユーロと割高。それでも、「2025年までには、ディーゼル・バスは消滅する」と、エリザベス・ボルヌRATP会長は意気込む。ハイブリッド・バスはもとより、電気バスも目指している。通常は労使の対立がかなり激しく、ストも多いRATPだが、「2025年バス計画」に関しては、労使が一致して推進中だ。

 パリのタクシーが最初に飛びついたのは、仏北部の工場で生産されるトヨタのハイブリッド車だ。日本でも、都営でも市営でも私企業でもいいから、どこかのバス会社が全バスのハイブリッド化を決行したら、東京の空も空色の美しさも増すと思うのだが。

2年前から始まったレジ袋禁止

 一方、フランスでは2016年6月30日付けの公報で、「エネルギーの移動に関する法律」の枠組みで、「大気及び海洋汚染の制限と保護」のために、いわゆるレジ袋を禁止すると通達した。以来、外出するときは、スーパーなどで買い物をする時に備えて、厚めのビニール袋や買い物袋などを、バッグやリュックに忘れずに入れている。

 今年5月、欧州連合(EU)の欧州委員会が使い捨てプラスチック食器をようやく禁止し、食品や飲料のプラスチック容器や包装の回収・処理費用を製造者に負担させる新たな規則の策定を加盟国と欧州議会に提案することを決めたが、それに2年も先駆けての決定だった。

 世界中のスーパーなどにレジ袋が登場してから約半世紀。消費社会のシンボル的存在として日常生活に定着していたが、フランスではこのレジ袋に代わって、昔懐かしい紙袋が復活。さらに、レジでは、その店のロゴ入りの厚さ50ミクロン(1ミクロン=1千分の1ミリ)以上の厚めのビニールの大型ショッピングバッグや布袋なども登場した。袋の持参を忘れると、こうした有料の袋を毎回、買わされるハメになる。

 薄いレジ袋のビニールの原料は石油だ。使い捨てのレジ袋は再生不能のうえ、燃やされると二酸化炭素(CO₂)が発生し、大気汚染につながる。また、軽いために、どこにでも飛んで行く。海や川に飛んでいった場合、丈夫なのでプカプカといつまでも浮かんでいる。粉々になった後は、魚や魚介類が飲み込み、周り回って人間様の胃袋に収まる。健康にいいわけがない。海鳥の94%の腹の中にはレジ袋があるとの統計も発表されている。魚や魚介類の腹の中も同様のはずだ。

 レジ袋を禁止する前、フランスでは毎年、約50億枚が消費されていた。丈夫なので、完全に消滅するまでに半世紀はかかると言われている。

東京港でごみを回収する清掃船。船内にたまったごみの多くは、プラスチックだった=2018年6月19日、東京都江東区拡大東京港でごみを回収する清掃船。船内にたまったごみの多くは、プラスチックだった=2018年6月19日、東京都江東区

大物政治家が環境相に就任するフランス

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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在フランス・ジャーナリスト

産経新聞パリ支局長を1990年から2011年までつとめる。著書に『ドゴールのいるフランス』(河出書房新社)、『フランス人の不思議な頭の中』(KADOKAWA)、『原発大国フランスからの警告』(ワニブックスPLUS新書)、『フランス流テロとの戦い方』(ワニブックスPLUS新書)、『ココ・シャネルの真実』(講談社+α新書)、『パリの福澤諭吉』(中央公論新社)など。ボーン・上田記念国際記者賞、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受賞。

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