世界ホスピス緩和ケアデー(10月13日)を前にイングランドと日本の比較から考える
冒頭で触れた英国のこどもホスピスは慈善運営が基本。英国では医療費は原則無料だ。医療サービス以外の利用料についても、多くが寄付金によって賄われ、こどもとその親が負担することはない。このようなホスピスはイングランドだけでも47カ所ある。
2012年と2017年の2回、筆者(田中美穂)は、馬場恵医師の協力を得て、イングランドのお隣ウェールズの首都カーディフ郊外にあるTŷ Hafan(ティ・ハヴァン、海辺の家)こどもホスピスを訪問した。英国の多くのこどもホスピスに共通している点は、全体的にとても明るくこどもらしい印象で、まるで自宅にいるようにこどもとその家族の心が安らぐよう配慮されていることだ。このこどもホスピスでも、こどものための個室、家族が過ごす部屋、共同の食事スペース、音楽や光や音の刺激を楽しむ部屋、室内プール、看護師の当直室などがあった。以下がティ・ハヴァンを訪問した際の写真だ(写真2-6)。
こうしたこどもホスピスは、施設や自宅でこどもを預かったり、施設で親子がともに過ごす時間を提供したりする一時休息支援(レスパイトケア)を行う。また、終末期のケア、家族・きょうだい支援、電話相談、緊急時の治療、症状管理、地域の社会資源の活用方法の助言なども担う。こどもや家族からの大切な相談や話し合いに応じたり、こどもや家族が心穏やかに過ごす時間と場所を提供したりもする。
さらに、ホスピスから地域に出向く「アウトリーチ活動」に力を入れているホスピスもある。例えば、家族、地域の看護師、病院や学校の看護師・介護士と連携して、こどもの自宅・病院・学校等ホスピス外で一時休息支援や日常生活のサポートを行っている。このうち、こどもの自宅で提供されるのが「ホスピスアットホーム」と呼ばれ、医療・ケアだけでなく、音楽療法やプレイセラピー(遊戯療法)、カウンセリングも行われる。これらはすべて、緩和ケアと呼ばれる。次節で詳しく説明しよう。