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得票データから読み解く沖縄県知事選の民意

久保慶明 琉球大学人文社会学部准教授(政治学)

 過去最大規模の知事選での最多得票は、有権者の幅広い支持の結果だろうか。選挙当日有権者数を100とした得票の比率(絶対得票率)に注目したい。

 選挙報道で用いる得票率(有効投票数を100とした得票の比率:相対得票率)と違い、絶対得票率では投票率や棄権率の影響を考慮できる。絶対得票率は、相対得票率に投票率をかけた数字と一致する。選挙の得票データ分析で重視されてきた指標の一つである。

 今回の絶対得票率は、玉城氏34.59%、佐喜真氏27.59%、兼島氏0.32%、渡口氏0.30%である。この結果を理解するため、以下では候補者を「自民系」と「非自民系」に分けて考えたい。

 前回2014年の知事選では、自民党推薦の仲井真弘多氏や自民党を離れた翁長雄志氏など、保守系政治家が複数立候補した。今回の知事選もその延長線上にある。「保守」対「革新」という構図では整理できない。

 2018年の特徴は、自民系の絶対得票率上昇と非自民系の絶対得票率低下が同時に起きたこと、にもかかわらず自民系が敗れたことである。

 具体的には、自民系の佐喜真氏は2014年の仲井真氏を3.82ポイント上回り、非自民系候補3氏の合計は2014年の非自民系(翁長氏、下地幹郎氏、喜納昌吉氏)の合計を4.68ポイント下回っている。自民系は票を上積みしたが、佐喜真氏は敗れた。こうした現象は、かつて安里積千代氏が平良幸市氏に敗れた1976年の第2回以来、42年ぶり二度目である。

沖縄県知事選で落選し支援者にあいさつする佐喜真淳氏=2018年9月30日、那覇市拡大沖縄県知事選で落選し支援者にあいさつする佐喜真淳氏=2018年9月30日、那覇市

投票率が上がった地域、下がった地域

 今回の知事選を理解するには、前回の2014年に加えて2006年と比べることが有用である。候補者全員が新人であったこと、自民系が普天間基地の移設先を明示しない戦略をとったこと、という2点で2018年と似ているからだ。

 特に注目したいのは市町村別の動向である。「沖縄県」といっても、東端と西端は約1000km、北端と南端は約400km離れ、41市町村が点在している。市町村別に丁寧にみる必要がある。

 まず、有効投票率の変化をみてみよう。全県での有効投票率は、2006年64.00%、2014年63.67%、2018年62.80%であった。2006年と2014年の両方よりも2018年の有効投票率が高かった地域は、伊江村と石垣市である。

 伊江村は、かつて「島ぐるみ闘争」の発端となった地であり、玉城氏の母親の出身地でもある。今回、玉城氏はここで第一声をあげた。石垣市は2014年の知事選で仲井真氏が翁長氏よりも多く得票した地域である(絶対得票率は仲井真氏25.15%、翁長氏24.15%)。今回は同日に県議補選が執行された。

 逆に2006年と2014年の両方よりも2018年の有効投票率が低かった地域は、久米島町と渡嘉敷村である。いずれも2014年に下地氏が高い得票率を記録した地域である。県全体の6.32%に対して、久米島町15.89%、渡嘉敷村10.93%だった。両町村での有効投票率低下は、佐喜真陣営への維新の推薦が有効に機能しなかったことを示唆する。

翁長氏の得票を維持し支持を拡げた玉城氏

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筆者

久保慶明

久保慶明(くぼ・よしあき) 琉球大学人文社会学部准教授(政治学)

1983年、栃木県生まれ。中央大学法学部卒業。筑波大学大学院人文社会科学研究科修了。博士(政治学)。日本学術振興会特別研究員(DC2、PD)、筑波大学人文社会系助教などを経て、現職。専門は、政治過程論、地方自治論、公共政策学。共著に『ローカル・ガバナンス』(木鐸社)、『政治変動期の圧力団体』(有斐閣)など。