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韓国史を動かす「愚民」たち

民衆を愚民視し、外部勢力に取り入るエリートたちが国をダメにする

徐正敏 明治学院大学教授(宗教史)、キリスト教研究所所長

*この記事は筆者が日本語と韓国語の2カ国語で執筆しました。韓国語版(한국어판)でもご覧ください。

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「愚かな民」とハングル

 韓国人から最も尊敬される政治家のひとりに、朝鮮王朝第四代君主の世宗大王(セジョンデワン 1397-1450)がいる。

 世宗は専制君主制を敷いたが、民を尊重し、民の立場に立って政治を行おうとする高い理想があったため、「最高の君主」として崇められている。わけても韓国人が自国の歴史の中で最も誇らしく思うハングルを創成したことで尊敬を集めている。 

國之語音,異乎中國,與文字不相流通,故愚民,有所欲言,而終不得伸其情者多矣。予為此憫然,新制二十八字,欲使人人易習,便於日用耳
――わが国の言葉は、中国と異なって、文字と言(音声)が対応しあっていないので、愚かな民は自分が言いたいことがあっても、それができないことが多い。私はこれを哀れみ、新たに二十八文字を制作した。皆がこれをかんたんに学び、日々の用が便利になることを願ってのことである――「訓民正音」序文より

 この「訓民正音」序文をみても、世宗が自国の民を愛し、民のための政治に心を砕いていたことがうかがえる。

 ただ、そのような世宗の目にも、民衆は「愚かな民」と映っていた。

 世宗が民衆のために制定したハングルは、それ以降の歴史において、長くその役割を果たすことができなかった。ヤンバン(エリート貴族)たちはこれを卑しい文字として嫌悪し、はなはだしくは「アングル」(ハングルを女の文字だとする呼称)とさえ蔑んで、その使用を否定したり制限したりしたのである。

 世宗以降の韓国政治史における民、民衆はいつも愚民視されてきた。

 しかし一方で、そのような民衆の中から革命的なダイナミックな動きは生まれた。歴史的な転換の大部分は彼ら「愚民」から始まるのである。


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筆者

徐正敏

徐正敏(そ・じょんみん) 明治学院大学教授(宗教史)、キリスト教研究所所長

1956年韓国生まれ。韓国延世大学と大学院で修学。日本同志社大学博士学位取得。韓国延世大学と同大学院教授、同神科大学副学長、明治学院大学招聘教授、同客員教授を経て現職。アジア宗教史、日韓キリスト教史、日韓関係史専門。留学時代を含めて10年以上日本で生活しながら東アジアの宗教、文化、社会、政治、特に日韓関係を研究している。主なる和文著書は、『日韓キリスト教関係史研究』(日本キリスト教団出版局、2009)、『韓国キリスト教史概論』(かんよう出版、2012)、『日韓キリスト教関係史論選』(かんよう出版、2013)、『韓国カトリック史概論』(かんよう出版、2015)、『東アジアの平和と和解』(共著、関西学院大学出版会、2017)など、以外日韓語での著書50巻以上。

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