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中国人初のインターポール総裁が突然消えた

中国公安エリートの失脚。妻は「夫が私の目の前で話すこと以外、何も信じない」

古谷浩一 朝日新聞論説委員(前中国総局長)

習近平体制下で公安幹部が次々に失脚

 孟氏は公安省のエリート幹部出身で、周氏が公安相時代には次官補として、周氏を支えた。

 周氏は胡錦濤体制下で10年間も警察部門を牛耳る立場にあったため、当時の公安省幹部の多くは周氏の息のかかった人物だった。彼ら公安省幹部は、習近平体制が2012年に発足した後、周氏拘束を受けて次々と失脚していった。2013年には現職の公安次官だった李東生氏が調査を受けていることが明らかになり、李氏は後に収賄罪などで懲役15年の判決を受けて服役中だ。

 ただ、孟氏がICPO総裁に抜擢されたのは2016年。すでに習体制が周氏につながる公安幹部を次々と失脚させた後のことだ。孟氏は失脚の危機を乗り越え、習氏への忠誠を誓うことで、政治的に生き残ったと見られていた。

 それなのになぜ、今ごろになって、その孟氏を失脚させなければならないのか。しかも、今更のように周氏との関係をその理由にしなければならないのも不自然である。

 孟氏の総裁就任は当時、国際社会の注目を集めた。影響力を高める中国が国際機関のトップに自国の人間を送り込んだということに加え、それが警察という特別な分野だったからだ。共産党政権が自らの都合によって国際的な警察当局の協力体制を恣意的に利用するのではないかという懸念の声も出た。

 いずれにしろ、その時点で、孟氏は習指導部の強い信任を得た人物であることは間違いないと目されていた。

 孟氏の総裁就任を祝うかのように、2017年にはICPOの総会が北京で開かれ、習氏は「中国は世界で最も安全な国のひとつだと、ますます多くの人が考えるようになっている」などといった、今から振り返れば何とも不思議な感じがする演説もしていた。

今すぐ拘束しないとよほど都合が悪いことがあった?

 いったい、今回の事件の背景には何があるのか。いつものように様々な臆測が飛び交っていることを紹介したい。 ・・・ログインして読む
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筆者

古谷浩一

古谷浩一(ふるや・こういち) 朝日新聞論説委員(前中国総局長)

1966年生まれ、神奈川県出身。1990年、朝日新聞社に入社。前橋支局、大阪本社社会部、東京本社経済部などを経て、上海、北京、瀋陽で特派員に。2012年1月から2013年8月まで東京本社国際報道部次長。2013年9月から2018年1月まで中国総局長。2018年4月から国際社説担当の論説委員。 1993年から1994年まで中国・南京大学、1997年から1998年まで韓国・延世大学でそれぞれ留学研修。

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