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「政官業の司祭」竹下政治の隆盛と退場

平成政治の興亡 私の見た権力者たち(1)

星浩 政治ジャーナリスト

暗雲に包まれていた竹下政権

 2月24日には昭和天皇の国葬にあたる「大喪の礼」が行われ、各国の首脳が弔問のために来日。昭和から平成への代替わりが一区切りついた、とも思われた。竹下政権内部からは「政局の雰囲気も変わってくれればよいが」(小渕氏)といった声が出ていた。
というのも、竹下政権は前年から暗雲に包まれていたからだ。

 1987年11月に発足した竹下政権は、中曽根康弘政権を引き継ぎ、自民党内最大派閥の竹下派に支えられた強力な政権だった。ポスト中曽根の総裁レースを争った安倍慎太郎を自民党幹事長に、宮沢喜一を蔵相に据えた。さらに、「竹下派七奉行」と呼ばれる側近を政権の要所に配していた。小渕官房長官、小沢一郎官房副長官、橋本龍太郎自民党幹事長代理、羽田孜農水相、梶山静六自治相、渡部恒三国会対策委員長、奥田敬和衆院予算委員長である。その布陣に乗って、竹下首相は88年12月、3%の消費税を導入するための関連法を成立させた。「長期政権」の呼び声が高まっていた。

 その政権を襲ったのがリクルート事件である。

「濡れてに粟」のリクルート事件

贈賄の疑いで逮捕され、東京拘置所に入る江副浩正・前リクルート会長 =1989年2月13日、東京・小菅拡大贈賄の疑いで逮捕され、東京拘置所に入る江副浩正・前リクルート会長 =1989年2月13日、東京・小菅

 発端は地方自治体のスキャンダルだった。88年6月、就職情報企業のリクルート社が川崎市の助役に対して、値上がり確実な関連企業リクルートコスモス社の未公開株を譲渡していたと朝日新聞がスクープした。

 その後、未公開株の譲渡先は政界へ拡大。本人や家族、秘書らが未公開株を受け取ったとして、竹下首相、安倍幹事長、宮沢蔵相、渡辺美智雄政調会長、中曽根前首相、藤波孝生元官房長官などの名が連日、報道された。株の売買で巨額の売却益を得る「濡れ手で粟」という言葉が流行した。89年2月には、江副浩正・リクルート社前会長らが東京地検特捜部に逮捕され、刑事事件に発展していった。

 株購入だけでなく、リクルート社からパーティー券を購入してもらったり、借り入れたりしていた政治家の名が次々と明らかになった。閣僚でも長谷川晙法相、原田憲経企庁長官への資金提供が判明し、辞任に追い込まれた。


筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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