星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト
1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
平成政治の興亡 私の見た権力者たち(1)
4月11日、リクルート社から竹下氏自身への資金提供が国会に報告された。1億5100万円だった。しかし、その後、他にも竹下氏の秘書名義で5000万円の借り入れがあったことが発覚。竹下首相は窮地に立たされた。
4月24日深夜、私は担当する小渕官房長官を取材するため、定宿の赤坂プリンスホテルに向かった。部屋の前に出てきた小渕氏は「総理は淡々としている」と語り、竹下氏の進退については明言しなかった。ただ、その目が赤く充血していたことを鮮明に覚えている。首相退陣の流れは固まっていた。
翌25日、竹下首相が退陣を表明。「リクルート問題に端を発する今日の深刻な政治不信の広がりはわが国の民主主義にとり、極めて重大な危機だ」としたうえで、「特に私の周辺をめぐる問題により、政治不信を強めてきたことについて国民のみなさまに深くおわび申し上げる」と語った。そして、新年度予算の成立後に退陣することを明言した。「最低でも4年は続く」(小渕氏)と思われていた竹下政権は、576日の短命政権で幕を閉じることになる。
退陣表明の翌26日、竹下氏の金庫番といわれた秘書青木伊平氏が自殺。竹下政権に衝撃を与えた。青木氏が亡くなる直前、私は別の秘書から、こんな話を聞いていた。
「伊平さんが『リクルートからの金の出入りを東京地検にすべて把握されている。もうどうしようもない』と嘆いている。相当思い詰めている」
ここで、竹下政権の意味を考えてみよう。
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