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結集する核のない政権

 そこから浮かぶのは、「安倍一強」の終焉である。党では派閥の多元化が進む。政権内部では、内閣人事局による各省の人事統制は変わらず、官邸主導は続く。ただし、こちらも過去の政権のように、来年度に向けた「斬新」な政策アイディアを各省に提出させ、予算をつける過程で政府全体を統合するというものではない。

 首相は、総裁選の間、憲法改正を次期政権の課題と繰り返した言明した。これは自民党内を引き締める狙いがあるが、特に9条改正は、公明党との決定的な亀裂を招くであろうし、与党の分断によって内閣支持率が低下する気配もある。

 そもそも、憲法改正は各省に新規の政策形成を強いるものではなく、政府内を結集させる効果はない。つまりこの争点は、自民党支持層を固めはするであろうが、そこから広く支持層を広げる効果を持つとは考えにくい。

 こうしてみると、党にも政権内にも、結集する核がないまま、政権が発足した。しかも、今回の自民党総裁選で3選を果たした安倍首相は、党則上3選までとされていることから、3年後には安倍内閣の時代は終わる。

初閣議を終え、記念撮影に臨む第4次安倍改造内閣の閣僚ら=2018年10月2日拡大初閣議を終え、記念撮影に臨む第4次安倍改造内閣の閣僚ら=2018年10月2日

回り始めた政権交代へのサイクル

 安倍後をにらむ政局の入り口の段階で、すでに「安倍一強」が終焉したとすると、今後3年間の政権は抵抗、離反、裏切りに悩まされるであろうことはほぼ確実である。それは、政権交代後の長期政権が終焉へと向かう過程であり、政権交代のサイクルがまた新しい局面へと回り始めたことを意味する。

 かつての自民党中心の政権は、2007年参院選の敗北後、ひたすら野党に押し込まれた。しかも、その参院選前の「消えた年金」問題に始まる社会保険庁の不祥事は、政権を失うまでその足かせとなった。民主党政権の場合は、2010年の参院選の敗北にくわえ、東日本大震災への対応をめぐる混乱が、政権への信頼を失墜させた。

 確かに現政権はいまのところ、これらに匹敵するほどの大失敗を抱え込んではいない。だが、5年半を超える政権運営の過程で蓄積された問題群から、何が浮上するかは分からない。

 大規模自然災害はいつ発生してもおかしくはない。くわえて、世界経済の先行きが不透明になるなか、アベノミクスに決定的な問題が生じる可能性もある。政権がひとつでも対応を誤れば支持率は急落し、別の内閣を求める動きが出てもおかしくはない。そんな危うい局面に入りつつある。

 他方、この政権の終焉の瞬間を見通せば、現在の野党の分断状況から、3年後に現在の自民党に対抗しうるだけの政権担当能力を備えた野党が出現するは考えにくい。むしろ、自民党内で安倍首相に代わる後継総裁が誕生することを想定する方が、現段階では現実的である。

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筆者

牧原出

牧原出(まきはら・いづる) 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

1967年生まれ。東京大学法学部卒。博士(学術)。東京大学法学部助手、東北大学法学部教授、同大学院法学研究科教授を経て2013年4月から現職。主な著書に『内閣政治と「大蔵省支配」』(中央公論新社)、『権力移行』(NHK出版)など。

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