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[105]沖縄「ちむぐくる」の実在感

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

選挙から一夜明け、自宅前で当選を伝える新聞を読む玉城デニー氏=2018年10月1日午前7時17分、沖縄市20181001沖縄知事選から一夜明け、自宅前で当選を伝える新聞を読む玉城デニー氏=2018年10月1日、沖縄市

9月25日(火) 午前「報道特集」の定例会議。3年半いたKディレクターが番組を離れるという。さびしい限りだ。今後とも潰されずに是非とも頑張って欲しいものだ。彼女は前向きな人なので絶対にやれると思う。岩波『図書』で細見和之氏が記している「ジョン・レノンとプルードン」が面白い。プルードンは著作『貧困の哲学』の中でジョン・レノンの「イマジン」の歌詞と同じ思想を説いていた、と。はははは。

 14時からダッカ事件の企画プレビュー。沖縄取材の仕込み。台風24号が沖縄地方に接近している。本当にこれが心配だわ。投票率がこれで下がると、有利になるのは企業や団体を基盤にした組織票、期日前投票を積極的に仕掛けている側だろう。台風が投票日を直撃するおそれはないのだろうか。

 17時10分羽田発の便で沖縄へ。満席だ。もう台風の影響が出ているのか結構揺れた。沖縄県知事選挙の結果は、沖縄だけでなく、日本の地方自治のありようにも決定的な影響を及ぼすことになるかもしれない。地域住民の自治権、自決権は、健全な民主主義の発展のためには今や最も枢要な要素となっているのだから。

 宿にチェックインした後、久茂地のDで地元記者から最終盤情勢を聞く。Rディレクターも同席。こちらが小声で話しているあいだ、隣席の2つのテーブルから関西弁の大きな声が聞こえてくる。ひとつのテーブルは男性だけのグループ、こちらに近いテーブルは女性だけの4人だ。観光客かなと思って耳に入ってくる言葉を聞いていると、「公明党」とか「青年部」とかの単語が登場している。そうか、こちらに来ている某団体の人々なのだなと了解。佐喜眞淳候補の推薦を決めた公明党沖縄県本は、全国からの応援で大々的に選挙戦に力を注入している。ついつい聞き耳を立ててしまう悪い癖が出たが、女性グループの方は主に組織の男女関係のことに話が及んでいた。どこも同じなんだなあ、と。

 ただ今回の公明党の佐喜眞支持の意味は大きい。決定的と言ってもいい。事前の世論調査では、自民党支持者の佐喜眞支持率より公明支持者の佐喜眞支持率の方が高くて、大方が佐喜眞投票で固まっているという結果だった。選挙結果に大いに影響するだろう。

 スマホの調子が最悪で、機種変更をすることにした。沖縄で時間をみてドコモショップに飛び込もう。

沖縄知事選、台風の動きが気にかかる

9月26日(水) 那覇市内のイオンに設けられている期日前投票所に取材に行く。今回の県知事選挙では期日前投票がとても増えているからだ。実際に行ってみたら本当に長い行列ができていた。イオンの関係者に聞いたら、きのう1日だけでここに3300人が期日前投票に訪れたそうだ。朝日やNHKなどがさっそく出口調査をしていた。僕らも投票を済ませた人に「何を基準に候補者を選びましたか?」と尋ねてみたが、意外に「基地問題です」と答えた人が多かったような印象だ。

 移動中、豊見城市内のドコモショップに駆け込んでスマホの機種変更をする。高いわ! 今時、アイフォンってこんなに高価なものなのか。たかが電話機なのに。すべてのデータを移して欲しいと言ったら、時間がかかるので電話帳と写真映像のみをやるので、あとは自分で自宅でやって欲しいと言われる。クラウドがどうとか、3か月以上たってからSIMフリーに移行できるとか訳のわからないことを早口で言われ面倒くさくなって、こちらも時間がないので「それでOKです」と言ってしまった。

 ドコモから宜野湾市の取材場所へと向かう。宜野湾市役所の期日前投票所も、那覇市のイオン会場以上に行列が長かった。佐喜眞候補の地元だものなあ。その後、沖縄国際大学の屋上で、争点リポート。普天間基地の早期返還。僕らが屋上にいた時間内にはオスプレイは飛んでいなかった。

 別班で動いているMディレクターらが、沖縄市内で開かれている佐喜眞派の支持集会を取材している。何だか与党幹部が多数出席のすごい集会だったようだ。会場もそこそこ埋まっていたそうで、企業からの参加の方々もご苦労様ですとしか言いようがない。

 ドコモショップで新機種のiPhoneを受け取って那覇に戻る。あしたの動き方についてR、Mディレクターらと打ち合わせ。台風の動きが非常に気にかかる。場合によっては投票日にも影響がもろに出てくるかも。今夜は玉城デニー候補はテンプスに来るとか。

小泉進次郎議員と残酷な風景

9月27日(木) ああ、もろに台風24号が沖縄を直撃しそうだ。あしたの航空便は軒並み欠航が発表されている。朝7時半に那覇のホテルを出発して名護市辺野古へ。台風が来るので漁船は陸に係留され、作業用台船も同様。工事作業も完全に止まっている。波打ち際で争点リポートを撮って、すぐにうるま市内の玉城デニー候補の街宣の取材。道ジュネ―(練り歩き)の作法も基本的には「オール沖縄」の旧態依然の方法。集まっているのは運動員が多い。けれども名護市長選挙の時と若干違うのは、普通の市民が車の中から手を振ったり反応がある。カメラマンの初沢亜利さんが取材していた。ばったり出くわす。スクーターで移動しているそうだ。

 僕らはそのままうるま市から那覇市のイオン那覇店へ。14時から小泉進次郎議員が佐喜眞候補の応援演説に来る。小泉氏が佐喜眞応援で沖縄入りするのはこれで3回目だ。とにかくものすごい動員力である。イオンの2階、3階からたくさんの人々がじっと彼の到着を待っている。

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