冨名腰隆(ふなこし・たかし) 朝日新聞記者 中国総局員
1977年、大阪府生まれ。同志社大学法学部卒。2000年、朝日新聞入社。静岡、新潟総局を経て2005年に政治部。首相官邸、自民党、公明党、民主党、外務省などを担当。2016年に上海支局長、2018年より中国総局員。共著に「小泉純一郎、最後の闘い ただちに『原発ゼロ』へ!」(筑摩書房)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
小泉首相は2001年、盧溝橋の人民抗日戦争記念館を訪れた。その背後に安倍氏がいた
安倍晋三首相が、中国を公式訪問する。10月25~27日の日程で北京を訪れ、習近平国家主席や李克強首相と会談し、日中平和友好条約発効40周年を記念するレセプションに出席する予定だ。
7年ぶりとなる日本の首相の公式訪問は、長く寒風が吹き込んでいた日中関係が改善に向けて本格的に動き始めたことを意味する。
今回の訪中で、安倍首相は北京以外にも地方視察を検討していたことは関係者の間では広く知られている。改革開放の象徴である深圳、隋や唐の時代に日中友好往来の重要な窓口であった西安、脱貧困政策が成果を結び経済成長著しい内陸部の貴州など、さまざまな候補地の名が挙がっていた。
しかし、すべて見送りとなった。複数の日中関係筋によると、問題になったのは地方視察に同行する中国側の「格」だったという。
中国の李首相が今年5月の訪日で北海道を視察した際、安倍首相は道内の全行程に自ら同行し、新千歳空港まで見送る異例の待遇でもてなした。自らの訪中時に「返礼」を期待しての行動だったのだが、当てが外れたようである。もっとも、中国首脳クラスが外国賓客の地方視察に帯同するケースは極めてまれだ。
日中間では1972年の日中国交正常化時、北京での交渉を終えた田中角栄首相、大平正芳外相、周恩来首相らが一緒に特別機に乗り込んで上海へ移動した事例がある。これは上海を拠点とする「四人組」ら文化大革命指導者らに外交成果を誇示する周氏のねらいがあったとされる。
話がそれた。外交上の日程調整の裏舞台を描くことが本稿の目的ではない。
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