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思った事をすぐ口に出す韓国の「伸びしろ」

この国では「規則ですので何ともできかねます」とは言われない

藏重優姫 韓国舞踊講師、日本語講師

「配慮」が身についている日本の保育園児たち

 日本は「イヤ!」に限らず、自分の意見を言わないか、遠回しにして言うコミュニケーションの方法が一般的です。自分の意図するところを曖昧にするためか、相手側にこっちの気持ちを悟ってほしいという甘えか、自分に自信がないのか、はたまた、自分の言葉に責任を持ちたくないのか、色々考えると楽しいです。

 でも、良いように考えると、相手への配慮です。はっきり自分の気持ちを表現せず、相手の立場や気持ちを優先する。

 娘を5歳まで東京で育てましたが、そうした配慮が保育園で子どもたちの身に付いていることに驚きました。

 先生が前に立つと、子どもたちは先生を見ようとする。そこには程よい緊張が既に生まれています。先生が次に何を言うのかと耳を傾けようとする。その状態が何時間もそれなりに続いていく。これはすごい訓練です。5歳にして全体を意識する雰囲気ができ上っているのです。

 これが日本社会のスタンダード! 配慮であり秩序!

 東日本大震災の際、秩序的なところ、忍耐強いところは世界から尊敬を集めました。韓国のママ友の間でも、たまに出てくる話題です。それだけ日本の秩序的なところ、他人に配慮するところを凄いと思って気にしているのです。

歌や演技の表現力が豊かな韓国の人たち

 良くも悪くも韓国は違います。

 私が小学生に日本語を教えに行った時のことです。さっそうと教壇に立って、構えた私。心の中で「みんな~私に注目!」と思っても、ザワザワはおさまらない。私は仕方なく、口を開いて子どもたちを注目させました。

 私の思い描いていたのは「さっそうと登場する私に注目する生徒たち」だったのですが、登場するだけではダメでした。一発、注目される何かをかます事が必要なのです。

 もちろん、韓国にも私が壇上に立った時から姿勢を正し、私を見る生徒もいます。逆に日本にも、先生が前にいるのにいつまでも私語をやめない生徒もいるでしょう。でも、私の言っているのは、個人的なそれではなく、全体的なことなのです。

 小学4年の娘のクラスでも、自分の思った時にすぐ発言する子が多いです。私が大学で教えている学生たちも、慣れてくると私が話している途中ですぐに質問してきます。「最後まで話を聞け~」と思う事、しばしばです。

 韓国には歌がうまい人が多いんです。声量と表現力、度胸が違う。遠慮、恥ずかしさなんて感じません。韓国の保育園では、一人ずつ歌を歌わせたり詩を朗読させたりする授業が1か月に2、3回はあります。人前に出ることを不得意とする子どももいますが、一人で前に出て歌ったり発表したりすることは日本より日常のようです。

 韓国映画や演劇を見ていつも思うのですが、韓国の人は演技がとても上手です。真に迫った演技は得意中の得意。感情表現が豊かなのでしょう。

 思った事をすぐに口に出すところや感情に正直なところが、歌や演技の表現力の凄さに関係している。私はそう考えています。

 私たちは、娘が5歳の時に突然韓国に移住し、この子は適応できるのかと心配しました。一見大人しそうに見えるうちの子が、平気で韓国の子どもに「シロ!」と言い、気の強い韓国の子どもたちと互角に渡り合っている姿を見ると、頼もしく、感情をはっきり表現できることにほっとしました。

拡大コスモスが咲く仁川大学のキャンパスで日本語を学ぶ学生たちと。前列左が筆者

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筆者

藏重優姫

藏重優姫(くらしげ・うひ) 韓国舞踊講師、日本語講師

日本人の父と在日コリアン2世の間に生まれる。3歳からバレエ、10歳から韓国舞踊を始め、現在は韓国にて「多文化家庭」の子どもを中心に韓国舞踊を教えている。大阪教育大学在学中、韓国舞踊にさらに没頭し、韓国留学を決意する。政府招請奨学生としてソウル大学教育学部修士課程にて教育人類学を専攻する傍ら、韓国で舞台活動を行う。現在、韓国在住。日々の生活は、二児の子育て、日本語講師、多文化家庭バドミントンクラブの雑用係、韓国舞踊の先生と、キリキリ舞いの生活である。

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