メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

相模原障碍者大虐殺事件 劇団態変の闘い(前編)

役者は障碍者のみ。世界各地で革命的な公演を続ける劇団が相模原事件を題材に

岩城あすか 情報誌「イマージュ」編集委員

「命に優劣はつけられない」というモラルの崩壊

拡大劇団態変の主宰者、金満里さん=2018年7月26日、大阪・梅田。提供:TETSUYA FUCHIGAMI
 世界でも類をみない凶行が、世界一安全と言われていた日本で、なぜおこったのか。

 功利主義や財政不安を理由とした、弱者切り捨てが横行する現代社会において、おこるべくしておこった事件だったと私は思う。

 ネット社会であらゆるマイノリティを攻撃する言説がはびこる中、規範意識を欠く政治家や批評家たちが台頭し、連日テレビ等でヘイト的な発言がまき散らされている。そのたびに「命に優劣はつけられない」というモラルが急速に失われていくようだ。

 かつて、ナチス・ドイツはユダヤ人のホロコースト(大量虐殺)のリハーサルとして、医療機関が国家と連携して障碍者を抹殺しようとする計画「T4作戦」を実行し、20万人もの障碍者や難病者が殺された。その後80年近くがたとうとした今なお、優生思想は社会の隅々まではびこり、暴力的な能力主義のもと、私たち一人一人に影響を及ぼしている。

 日本でも、戦前から長期間にわたってハンセン病患者が「旧らい予防法」により、地域と遮断された国立療養所に隔離されてきた歴史がある。一部の障碍者やハンセン病患者らが子どもを生まないよう、強制的に不妊手術を施してきた状況が改められたのは、つい最近、旧優生保護法が「母体保護法」に改正された1996年になってからだ。

(鶴橋の)ヘイトデモの現場で『在日朝鮮人を殺す』とか言葉で発していたことが、現実として起こるのはどこからか、を思うと怖かったんです。障碍者からじゃないかって。それが去年、あの大虐殺として実際に起こってしまったことに対して、これは言い過ぎかもしれませんが、ヘイトを受けている在日の人からみても、他人事になってしまっている。なぜかというと、施設だから。その施設で、名前を伏せてしまったからね。これ巧妙ですよ。日本でこれが実験されている。これが世界的な右傾化の一つとして、世界に発信されていく。日本が植松聖を使ってやってしまった実験のメッセージっていうのは、このまま放っておいたら人類の総意のようになってしまうよ、って思いますよね。(劇団態変が年3回発行している情報誌「イマージュ」vol.68:2017年夏号、劇団を主宰する金満里さんと鵜飼哲さんとの巻頭対談「奪われて良い命などない!~優生思想と訣別する」P.7、金さんの発言より)

拡大「イマージュ」は1冊500円、年間購読は1,500円。左は「7.26障碍者大虐殺から2年」特集号(2018年8月発行)、右は事件からちょうど1年を機に特集を組んだ2017年夏号
 

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

岩城あすか

岩城あすか(いわき・あすか) 情報誌「イマージュ」編集委員

大阪外国語大学でトルコ語を学んだ後、トルコ共和国イスタンブール大学(院)に留学(1997年~2001年)。通訳やマスコミのコーディネーターをしながら、1999年におきた「トルコ北西部地震」の復興支援事業にもボランティアとして関わる。現在は(公財)箕面市国際交流協会で地域の国際化を促す様々な事業に取り組むほか、重度の障碍者のみで構成される劇団「態変」の発行する情報誌「イマージュ」(年3回発行)の編集にも携わっている。箕面市立多文化交流センター館長。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

岩城あすかの記事

もっと見る