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沖縄の若者は右傾化しているのか?

沖縄のアイディンティティーと若者(下) 

中原一歩 ノンフィクション作家

沖縄県知事選で当選を決め孫を抱き上げる玉城デニー氏=2018年9月30日、那覇市拡大沖縄県知事選で当選を決め孫を抱き上げる玉城デニー氏=2018年9月30日、那覇市

ネットに感化されて若者が右傾化?

 先月の沖縄県知事選で10代、20代の若者ほど佐喜眞淳支持が多く、年代が高くなればなるほど玉城デニー支持が多かったという結果について、その要因を「若者の右傾化」と分析する論考がある。テレビも新聞も見ない若者が、ネットに蔓延(まんえん)するネトウヨのデマ情報に感化されているというのだ。

 「沖縄のアイディンティティーと若者」で沖縄の若者たちのアイデンティティーが刻々と変化している実態を報告した。今回は、沖縄の若者は本当に右傾化しているのかについて、考えてみたい。

 確かに沖縄県知事選では、ツイッターやSNSで候補者に対するデマ情報が飛び交っていた。悪質なデマはデニー氏に集中。選挙戦の最中、本人が法的措置を辞さないと宣言するなど、これまでにない情報戦の様相を呈していた。

 現代の若者を取材すると、政治や社会のニュースを得る手段として、既存の新聞やテレビよりもネットやSNSが多いのは事実だ。しかし、沖縄の若者がネットのデマ情報に感化され右傾化しているというのは、本当なのだだろうか?

地元のメディアの報道姿勢に疑問

 北谷に暮らす金城樹里さん=仮名=(27)は、駐留する米軍と対立するのではなく共存できないかと考えている。けれども、積極的な基地賛成ではない。沖縄戦などの歴史にも触れて育ち、その思考はリベラルそのものだ。しかし、地元沖縄の新聞やテレビの報道姿勢に関しては、かねてからある疑問を抱いていたと漏らす。

 「米軍に関しては『ヘリ墜落』『米兵が民家に侵入』『米兵が泥酔して暴行事件』などのネガティブな情報は報じられるけど、そうでない情報は掲載されない。一度、バイト先の目の前の国道で大規模な交通事故があったんです。警察よりも救助隊よりも、真っ先に事故に巻き込まれた日本人を助けたのは、顔見知りの米兵さんだった。この時、事故そのもののニュースは報じられたのですが、米兵が日本人を助けたという事実は報じられませんでした」

 報道機関である以上、編集上の取捨選択はそれぞれのメディアに委ねられる。樹里さんの指摘に反対することはたやすい。けれども、既存のメディアは彼女を納得させるだけの説得力のある言葉を今、有しているだろうか。

 戦後、沖縄のメディアは、沖縄戦の歴史の継承を編集の指針とし、「反戦」「反基地」の主張を明確にしてきた。それこそが沖縄の「正義」だったからだ。

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筆者

中原一歩

中原一歩(なかはら・いっぽ) ノンフィクション作家

1977年、佐賀県出身。高校時代に家出をして、ラーメン屋台で調理・接客修業をする。同時に、地方紙などで「食と地域文化」の原稿を執筆。上京後、世界各地を放浪。アマゾンから南極、アフガニスタンの戦場まで訪問国は80カ国に及ぶ。現在は雑誌やWEBなどで人物ルポや政治記事を執筆している。主な著書に『私が死んでもレシピは残る 小林カツ代伝』(文藝春秋)、『最後の職人 池波正太郎が愛した近藤文夫』(講談社)、『奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」』(朝日新書)など。