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沖縄の若者は右傾化しているのか?

沖縄のアイディンティティーと若者(下) 

中原一歩 ノンフィクション作家

複雑な若者のアイデンティティー

 生まれた時から米軍基地が当たり前に存在する若者のアイディンティティーは複雑だ。戦争は絶対反対。けれども辺野古のゲート前に座り込みを続けるおじい、おばあのように、権力に対する「抵抗」は社会変革の手段として選ばない。若い世代の平和の定義が、必ずしも「反戦」「反基地」ではないことは「沖縄のアイディンティティと若者(上)」でも書いた通りだ。

 今回取材した25人(18歳〜29歳)のうち地元紙を含む新聞を購読している人は0人。ネット版の地元紙を「毎日読む 2人」「2〜3日に1回 5人」「気になる記事が目に留まった時 15人」だった。それに対し、毎日見ているのはツイッターなどSNS上に流れるニュース。動画共有サイト「ユーチューブ」をメディアとして位置づける若者もいた。

 樹里さんのように、既存のメディアに対し、漠然とした不信を持つ人は少なくない。けれども、だからといって、彼女らすべてが「右傾化」しているとは到底思えない。ただ、こうした不信につけ込んで「偏向報道」という一方的なレッテルを張り、特定のメディアを攻撃する言論がネット上に溢れているのも現実だ。

「中国の脅威」を意識

「ユーチューブ」に投稿された尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件のビデオと見られる映像。巡視船「みずき」に衝突後、遠ざかる漁船=2010年11月5日拡大「ユーチューブ」に投稿された尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件のビデオと見られる映像。巡視船「みずき」に衝突後、遠ざかる漁船=2010年11月5日

 「既存のメディアへの不信」と並んで、沖縄の若者が意識している言論がある。「中国の脅威」だ。「玉城デニーが当選したら沖縄が中国に乗っ取られる」。選挙期間中、SNSに大量に投下されたこの悪質なデマも、沖縄が中国の脅威下にあることを念頭に置いたものだ。若者の中にも辺野古への基地建設には反対。けれども中国には漠然とした不安を感じると語る県民は一定数いる。

 琉球王朝の時代から、沖縄は大陸・中国と深い関係にあった。琉球では新しい王が即位する際、中国の皇帝の使者「冊封使」を受け入れる風習があった。琉球王朝にとって冊封使の受け入れは国家の存続をかけた重要行事。彼らが那覇に滞在する半年の間、7回にも及ぶ宴会が催され、歌や組踊、爬龍船(ハーリー)など趣向を凝らした行事が続いた。こうした歴史が米軍基地同様、沖縄独特の文化や風習を形成したことは言うまでもない。

 こうした歴史の文脈は、90年代以降、中国の漁船や軍艦、潜水艇が尖閣諸島周辺で確認されるようになると、まったく意識されなくなくなる。決定打となったのが2010年に発生した「尖閣ビデオ流出事件」だ。中国漁船が意図的に海上保安庁巡視船に衝突する収めたビデオが流出した以降、中国に対する反発が一気に高まった。

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筆者

中原一歩

中原一歩(なかはら・いっぽ) ノンフィクション作家

1977年、佐賀県出身。高校時代に家出をして、ラーメン屋台で調理・接客修業をする。同時に、地方紙などで「食と地域文化」の原稿を執筆。上京後、世界各地を放浪。アマゾンから南極、アフガニスタンの戦場まで訪問国は80カ国に及ぶ。現在は雑誌やWEBなどで人物ルポや政治記事を執筆している。主な著書に『私が死んでもレシピは残る 小林カツ代伝』(文藝春秋)、『最後の職人 池波正太郎が愛した近藤文夫』(講談社)、『奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」』(朝日新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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