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翁長雄志前沖縄県知事の県民葬で、玉城デニー知事、翁長前知事の妻の樹子さん、長男の雄一郎さん、新里米吉県議会議長らにあいさつする菅官房長官(左)=2018年10月9日午後3時20分、那覇市拡大翁長雄志前沖縄県知事の県民葬で、玉城デニー知事、翁長氏の妻の樹子さん、長男の雄一郎さんらにあいさつする菅官房長官(左)=2018年10月9日、那覇市

10月9日(火) 朝の便で沖縄へ。ずいぶん以前からお約束していた地元紙・琉球新報のフォーラムでの講演だ。まさか当時はこのようなタイミングでの講演になるとは思ってもみなかった。つまり翁長雄志前知事がご存命で元気な頃に決まっていた話だった。それが一気にものごとが加速度的に動いた。玉城デニー知事誕生の日からまだ正式には5日しかたっていない。

 11時過ぎに那覇空港に到着して宿舎となっているホテルへ。主催者の方で用意されたホテルはなかなか立派なホテルだった。昨夜からシャワーを浴びていなかったので、すぐさま浴室でシャワーを浴びようとしたら、そこに用意されていたアメニティ類がD〇〇のものだった。『ニュース女子』の件以来、自分の確固たる意思としてここの商品は受け付けないようにしていたので、自宅から持参してきた洗面道具のなかにあったBodyWashとシャンプーとリンスを使った。

 14時からの翁長さんの県民葬に参列するために県立武道館に移動。今日は天気もいいので、黒い喪服に身を包んだ大勢の市民が続々と会場にやって来ている。黒いかりゆしを持って来てよかった。定刻通り式が始まる。僕は式典会場のほぼど真ん中の席に座った。ひとりの参列者として、県民葬で翁長さんを追悼しようと思ったのだ。琉球古謡が流れる中で、デニー知事が遺影を持った翁長樹子夫人と長男の雄一郎氏を先導する形で会場におごそかに入場してきた。デニー知事の弔辞に続き、友人代表として金秀グループの呉屋守将会長が言葉を送った。故人がデニー氏とともに「後継」のひとりとして言及していた人物。存在感が違う。

 さて、来賓代表として、式を欠席した安倍首相の弔辞を菅官房長官が遺影の前に立って代読した。どこか緊張感が漂っていた。選挙戦のさなか、菅官房長官が沖縄入りして、佐喜眞淳候補をさんざん応援していたことを県民は知っている。そして首相や官房長官が、亡き翁長雄志氏に対してどのようなふるまいをしてきたのかも知っている。弔辞の中で「沖縄県民の気持ちに寄り添いながら」「沖縄の過重な基地負担を軽減する」とのくだりが読み上げられるや、何かが決壊したのか、自重の気持ちを逆なでしたのか、会場から次々に怒りの声があがった。「ウソつき!」「民意を大事にしなさい!」「帰れ!」。怒りの声は各所から1分近く続いたように思った。参列者のひとりとして僕は持参してきた鞄からデジカメを取り出して、その混乱の状況を撮影した。当然、そうすべきだと思った。この怒声は沖縄と本土の関係の紛れもない現実だ。献花を済ませて外に出ると、会場に入りきれない市民の方々が黒い喪服に身を包んで献花の順番をじっと待っていた。菅官房長官はとっくに空港へと向かっていた。会場を去る際にも罵声を浴びていた。

 夕方、琉球新報の方々と一献。強い古酒をいただき、ホテルでダウン、熟睡する。友人から聞いたところでは、今夜のNHKのニュース7、ニュースウオッチ9、いずれもあの怒声はカットされて県民葬の模様が淡々と「粛々と」報じられていたそうだ。NHKの内部で、いつの時点で誰がどのような具体的な言葉でカットさせたのかを知りたいものだ。

 今年のノーベル平和賞受賞者の一人、シリアのヤズィディ教徒でISIS(イスラム国)の性奴隷とされ逃げ帰り、女性の人権救済活動をしているナディア・ムラードさんが記者会見をしていた。「声をあげられない人の声になると決意をした」と。一切笑い顔のない会見。

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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