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「移民はここにいる」現実を直視して政策の確立を

髙谷幸 大阪大学大学院人間科学研究科准教授

「移民政策ではない」と主張する政府

 一方で、この方針転換も「移民政策ではない」と明言されている。移民政策とは移民を対象にする政策の意味だが、ここで「移民」とは誰を意味しているのだろうか。国際的な定義では、「国際移民」とは「移動の理由や法的地位、自発的か非自発的かに関係なく、本来の居住国を変更した人々」を意味する。中でも1年以上にわたる居住国の変更を長期とするのが一般的である。この定義にもとづくならば、日系人や国際結婚で定住した外国人はもちろん、最大5年間の就労が認められる外国人技能実習生も「移民」である。

 しかし安倍政権が用いている「移民」はもう少し狭い意味だ。前述の「骨太の方針」では、この政策方針が「移民政策とは異なるものであり、外国人材の在留期間の上限を通算で5年とし、家族の帯同は基本的に認めない」とされている。つまり、(少なくとも入国当初は)在留期間の上限があること、家族の帯同が認められず、単身での入国になるという点が、「移民」ではないことの根拠とされている。逆に言えば、「移民」とは、在留期間の上限がなく、家族の帯同も認められた形で暮らす人びとだといえるだろう。したがって、本稿でも、以下ではこの政府のいう意味で「移民」という用語を用いよう。

 政府は、今回の方針は「移民政策」ではないというが、

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筆者

髙谷幸

髙谷幸(たかや・さち) 大阪大学大学院人間科学研究科准教授

神戸大学法学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科修了。博士(人間・環境学)。移住者支援NGO勤務、日本学術振興会特別研究員(PD)、岡山大学大学院社会文化科学研究科准教授などを経て、現職。専門は社会学・移民研究。著書に『追放と抵抗のポリティクス――戦後日本の境界と非正規移民』(ナカニシヤ出版)。