明確になった世界戦略におけるアフリカの位置付け
2018年10月30日
中国にとってアフリカは重要な「足場」であり、米中の覇権闘争が激化するなか、そのアフリカ進出は世界のバランスにも大きくかかわる。習近平国家主席は9月2日、北京にアフリカ諸国首脳を招いた第7回中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)で、アフリカからの要望や批判に譲歩する姿勢をみせる一方、中国の世界戦略に占めるアフリカの位置付けを明確にした。これにより、中国のアフリカ進出は新たなステージに入ったといえる。
以下では主に3点に絞ってみていこう。
第一に、「一帯一路」構想とアフリカ進出の連動が正式に打ち出されたことだ。
ユーラシア大陸をカバーする経済圏「一帯一路」構想は2014年に発表され、もともと東アフリカ一帯もその圏内に位置づけられていたが、2015年の第6回FOCACでの基調演説で習氏は一度もこれに言及しなかった。これと対照的に、第7回FOCACでは「一帯一路」の用語が、しかも東アフリカに限定しない形で、4回用いられた。これは中国主導の経済圏にアフリカを組み込む意志を、公式に内外に打ち出したものといえる。
強権化する習近平体制は国内企業による投資対象の選別への干渉も強めているため、習氏の「お墨付き」が出たことで、中国企業のアフリカ進出がさらに促されると予想される。
この兆候は、資金協力の変化にもみてとれる。第7回FOCACで習氏は3年間で600億ドルの融資などを提供すると約束したが、その金額は2015年の第6回FOCACで提示されたものと変わらない。ただし、それまで右肩上がりで伸び続けていた資金協力の総額が頭打ちになった一方で、第7回FOCACではアジア・インフラ投資銀行やシルクロード基金など、「一帯一路」構想を推し進めるために中国が設立した金融機関を柔軟に運用するとも強調された。
2000年代以来、中国はアフリカで橋や道路などの建設を進めており、最近では2017年1月に内陸国エチオピアと紅海に面したジブチを結ぶアディスアベバ―ジブチ鉄道を開通させた。これまで基本的に別々に進められてきた「一帯一路」構想とアフリカ進出が正式に結びつけられたことで、中国主導のサプライ・チェーンにアフリカを巻き込むため、こうした国際的な輸送網の整備はさらに加速するとみられる。
第二に、「中国がアフリカから輸入を増やすこと」が強調されたことだ。
従来、中国は「アフリカとの貿易の活発化」を一貫して主張してきただけでなく、2006年の第3回FOCAC以来、アフリカ産品の無関税輸入の対象を段階的に増やしてきた。しかし、FOCACの基調演説で中国首脳がアフリカから輸入を増やす意志を表明することは、これまでなかったことだ。
今回、習氏がこれをあえて明言したことは、アフリカ諸国に中国との関係への利益を見出させるための方策といえる。
アフリカでは欧米諸国への歴史的な反感の裏返しとして中国の進出を受け入れる土壌があるものの、歓迎一色でもない。その一つの理由は、無関税輸入が導入されているとはいえ、中国のアフリカからの輸入額の約80パーセントを石油・天然ガスなどの資源が占めており、ほとんどのアフリカ諸国が中国との貿易で大幅な輸入超過に陥っていることだ。
つまり、FOCAC基調演説でわざわざ「アフリカからの輸入の増加」が取り上げられたことは、「一帯一路」構想にアフリカを組み込むことに関連して、中国が「アフリカに利益をもたらす、責任ある大国」として振る舞う政治的意志を示したといえる。
習氏は基調演説で「中国は…保護主義と一国主義を拒絶する」とも述べている。トランプ政権が保護主義の色彩を強め、アフリカでもアメリカとの貿易に警戒感が高まっているタイミングで、アフリカ産品の輸入増加を明言することは、アフリカ各国を中国に向かわせやすくする。
第三に、安全保障に関する協力を増やすことだ。
第7回FOCACの基調演説で習氏は、安全保障に関して13回言及した。2006年と2012年に胡錦濤国家主席(当時)は、それぞれ3回安全保障について触れたが、これが歴代の中国首脳の基調演説で最多だったことを考えると、習近平体制がいかにこの分野を重視しているかが分かる。
南シナ海の領土問題など、海外における中国の軍事展開は西側諸国で関心がもたれやすいが、
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください