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成田空港で会見する安田純平さんの妻の深結(みゅう)さん=2018年10月25日20181025拡大成田空港で会見する安田純平さんの妻の深結(みゅう)さん=2018年10月25日

10月23日(火) 光州フォーラム3日目。午前中のテレビとSNSの関係にまつわるセミナーなどを聴く。『世界を変える15分』の成功ストーリーなど。要は、お金儲け=ビジネスの話だ。地上波とネットとオフラインのあいだの本質的な差異が話し合われない。

 お昼に光州ビエンナーレへのミニツアー。これがとても面白かった。ディアスポラが大きなテーマとなっている。わざわざ光州まで来た甲斐があった。中国からのドキュメンタリー作品『人生一串』。中国の庶民の味・串焼きを、ハリウッド映画みたいに巨額のお金と時間を費やして制作されたという感じ。これをネットサイトで独占的に公開したからって何の意味があるというのか。中国のテレビ界と日韓のテレビ界とのあいだには明らかに溝がある。

 午後、NHKの作品『ブラタモリ』。倉敷の回。実は僕はあんまりテレビを見なくなってしまったので、この日本の人気番組もみたことがない。タモリと言えば、僕の世代では、あの強烈な『4か国語麻雀』の出し物なのであって、『笑っていいとも!』ではないのだ。だから、いい人=タモリの旅番組には興味が向かっていかないのだ。上映後に、韓国の参加者から、倉敷の紡績工場が紹介されていたくだりに関連して「徴用工の問題など歴史的に痛ましい出来事を取り扱う際に、政府からコントロールはないのか?」という質問が飛び出した。ぎくりとした。これに対して参加していた『ブラタモリ』のプロデューサー氏は、「NHKは公共放送であって、不偏不党、中立に伝えることをやっているので、政府からの圧力は基本的には全くありません」などと答えていた。それを聞いていた僕は、心のなかで「本当にそうなのかい?」と呟いたが、何だか『ブラタモリ』の足を引っ張るような気分に陥ってしまい、質問もできなかった。

 ホテルに戻って映画『共犯者たち』の推薦コメントと「琉球新報」講演記録の校正。あしたは、光州からソウルへ向かうことにしてチケットの予約をS大兄にやっていただく。

 閉会式のあと、韓国側のスタッフ4人とこちらも、S、S、K3氏らを含めて8人で、近所の居酒屋に行ってワイワイと論じあっていたら、何と23時48分、シリアで武装勢力によって拘束されていた安田純平さんが解放されたとの一報。Kさんが朝日新聞のニュース速報で知って教えてくれた。トルコ南部にいるらしい。これは大変だ。ソウル行きどころではない。すぐに東京サイドと連絡をとる。東京サイドはYプロデューサーがひとりで対応しているようだった。すぐに帰国できる便、あるいは韓国からイスタンブールに直行便があるかどうかを調べる。すると最速で、あしたの朝7時45分発の金浦―羽田便があった。だが光州から金浦まではもう足がないのだった。あと7時間しか出発まで時間がない。もともとは光州事件の記念館に朝8時半からS、K両氏と行く予定だったが、それどころではなくなった。

 とにかくいっぺんにアルコールも醒めてしまい。あわてて荷物をパッキングする。シャワーを浴びて、フロントに聞くと、ここからだと金浦空港までタクシーで4時間、料金は割引料金で35万ウォン(約3万6000円)で行かせるという。そうか、でも仕方がないか。行くしかない。そうでなければ帰国は午後遅くになってしまう。


筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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