西田 亮介(にしだ・りょうすけ) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授
1983年生まれ。慶応義塾大学卒。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。専門は情報社会論と公共政策。著書に『ネット選挙』(東洋経済新報社)、『メディアと自民党』(角川新書)、『マーケティング化する民主主義』(イースト新書)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
国会では、人手不足の分野を中心とした外国人労働者の受け入れに向けた出入国管理法(入管法)改正案をめぐる議論が喧(かまびす)しい。
確かに労働市場は人手不足だ。厚生労働省が10月末に発表した有効求人倍率は1.64倍となり、1974年以来の高水準だという。2.18の東京を皮切りに、上位5都県で2倍を超え、10位の香川でさえ1.81と、広く都市部から地方まで働き手が見つからない状況が続いている。
少子化が進む日本で頼みの綱は外国人と、これまで労働者単純労働などの移民を認めてこなかった日本でも、出身国に技能を普及させる「国際貢献」を目的とした技能実習生を5万人に迫る勢いで受け入れられてきたが、それでも産業界の要請にこたえられない。そこで、来年4月からという異例の速さで新たな労働力の受け入れる方向となり、その制度を定める入管法改正が喫緊の課題になったかたちだ。
だが実は、日本はOECD加盟35カ国中4番目の移民受け入れ国として数えられている。我々自身がどうアイデンティファイしようとも、世界からはすでに「移民大国」と見られているのだ。とすれば、どのような理由であれ日本に来た外国人を、どう処遇するかということが、現在そして将来の日本のレピュテーション(評判)・リスクに直結することは忘れるべきではない。
ところで、訪日外国人と我々大学人の接点となる大学教育の現場でいえば、研究室を運営するようになって驚かされたのは昨今の留学生事情、なかでもお隣の大国・中国からの留学生の実態だ。中国における昨今の「日本ブーム」や、ヨーロッパやアメリカの治安情勢の悪化などもあり、手頃な留学先として「日本人気」があらためて高まっているように思われるのだ。
ここで「あらためて」と書くのは、1980年代の鄧小平のもとでの改革開放政策のもとで、政治経済的エリートの「卵」が日本への留学をはじめて以来、日本の大学、大学院は、中国における留学における有力な選択肢のひとつであり続けてきたからだ。彼らがいまでは中国の政治経済上の要職を務めていることも少なくない。日本語を流暢(りゅうちょう)に話し、水を向けると、日本留学時代を懐かしそうに語ってくれる。
もちろん筆者も、日本の10倍超の人口を抱え、経済的にも発展を遂げる中国から日本への留学生が増加していることは知識としては知っていた。だが、実際にいざ自ら受け入れる側になってみて、経験的に学んだことも少なくない。筆者の主観も交えつつ、そんな昨今の留学生事情の一端を紹介したい。
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