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そして安田純平さんは謝った

誰に対し何を謝ったのか。それはこの国で生きていくための、やむを得ない護身策だった

石川智也 朝日新聞記者

「騒いだ」のはメディアであり「世間」だ

 それにしても、この「謝罪」は、いったい、誰に対し、何を謝っているものなのだろう。

 紛争地取材の実績あるジャーナリストが、職業である取材・報道のために現地に入り、運悪く拘束された。そのことが、どのような理由で、謝罪を要するほどの「罪」に問われているのだろう。そう考えたところで、デジャヴュに襲われたのだった。そして、なんとも暗澹たる気分になった。

 SMAPの解散危機が最初にスポーツ紙などで電撃的に報じられた2016年1月、メンバー5人が急きょ生放送で「謝罪」の言葉を述べたことがあった。彼らは沈鬱な表情で、口々にこう言った。

「我々のことで世間をお騒がせしました。そしてたくさんの方々に、たくさんのご心配とご迷惑をおかけしました」
「この度は僕たちのことでお騒がせしてしまったこと、申し訳なく思っております」
「たくさんの方々に心配をかけてしまい、そして不安にさせてしまい、本当に申し訳ございませんでした」

 このときも、彼らはいったい何に謝っているのか、そもそも謝る必要があるのか、疑問が募った。

 彼らはまずもって「世間をお騒がせした」と謝罪した。しかし、私たちは「お騒がせ」したのが彼らではないことを知っている。「騒いだ」のはメディアであり、「世間」である。

 今年5月にも、メンバーの一人が強制わいせつ容疑で書類送検されたTOKIOのその他4人が、「みなさまに多大なる迷惑をかけた」「全員の責任」と謝罪会見をした。自分が罪を犯したわけでもないこの4人がなぜ謝る必要があるのか、どんな「責任」があるのか、やはり訝しんだ。しかしこうした会見を開かなければ、おそらく「世間」は許さなかっただろう。

 「世間」とはいったい何か。

拡大謝罪する安田純平さん(左)を取り巻く報道陣=2018年11月2日

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筆者

石川智也

石川智也(いしかわ・ともや) 朝日新聞記者

1998年、朝日新聞社入社。岐阜総局などを経て社会部でメディアや教育、原発などを担当。2018年4月から特別報道部記者。慶応義塾大学SFC研究所上席所員を経て明治大学感染症情報分析センターIDIA客員研究員。共著に「それでも日本人は原発を選んだ」(朝日新聞出版)等

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