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田中均氏が語るポピュリズム脱却論

ポピュリズムと専制政治が横行する世界を切り開く鍵はイノベーションだ

田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

ポピュリストと専制的指導者が跋扈

 第二次世界大戦以降の国際社会は二つの局面で説明される。冷戦の時代と冷戦終了後のグローバリゼーションの時代だ。

 冷戦の時代を支配したのはイデオロギーだ。資本主義と社会主義は相容れないイデオロギーとして相互排除に動いた。米・ソは「恐怖の均衡」と言うべき大量の核兵器と大陸間弾道弾の相互抑止で直接的な軍事衝突を回避し、西側諸国はソ連を「封じ込める」ことに成功した。

 G7は世界のGDPの約7割を支配し、西側の安全保障は不可分の一体と認識し、政治・経済政策の調整を進め、国際社会のルールを構築していった。

 そして冷戦は西側の勝利に終わった。1989年にベルリンの壁が崩壊し、ブッシュ(父)米国大統領とゴルバチョフ・ソ連大統領は冷戦の終了を宣言した。この頃、私は欧州に駐在していたが、ベルリンの壁が落ち、冷戦が終わるとは思ってもみなかった。

 冷戦後30年間の時代は、日本では平成の30年の時代だ。資本主義の担い手である企業は国境を越え、ヒト、モノ、カネ、サービス、技術が縦横に動き回り、二つの事象を生んだ。資本や技術が流れ込み、安価な労働力を提供出来る発展途上国は新興国として大きな成長を達成した。先進民主主義工業国にほぼ独占されていた富は、新興国にも広がり、世界の力関係を変えた。

 一方、先進民主主義国では、持つ者と持たざる者の格差を拡大し、それが是正されることなく進んだことへの不満は、既成の政党などの政治勢力に向いた。ソーシャル・メディアは過激な意見の伝達を容易にした。

 ヒトの流れの自由化が移民や大量の難民を生み、自分たちの職業が脅かされているという危機意識は、ヨーロッパ中で移民を排斥する極右や極左の台頭を生み、英国はEU離脱を決めた。米国では既成の政治指導者は自分たちを切り捨ててきたと感じる米国民の多くがトランプ支持に廻った。

 そして、いま世界を見ると、トランプ大統領だけでなくブラジルなどでもポピュリスト的政治家が国を率い、一方、習近平・中国国家主席やプーチン・ロシア大統領など専制的指導者が強権を行使する。これでは世界の安定的統治は望むべくもない。

拡大APEC首脳会談で撮影に臨むトランプ大統領、プーチン大統領、習近平国家主席ら=2017年11月11日、ベトナム・ダナン

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筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。2006年4月より2018年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、2019年11月10日刊行)、『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。

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