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中間選挙でトランプ対中外交は信任されたのか

山本 章子 琉球大学講師

民主党支持者ほど中国を経済的脅威と認識

 トランプ政権は2018年3月、鉄鋼を「過剰に」供給する中国を主対象として、アメリカに輸出される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課した。また、同年7月から9月にかけて3度にわたり、中国からの年間輸入額の約半分にあたる、計2500億ドル相当の中国製品に制裁関税を発動した。中国もこれに対して、大豆などの米国製品1100億ドル分(アメリカからの全輸入の85%に相当)に報復関税を課した。

 このような措置の背景には、2018年に入ってからアメリカの対中貿易赤字が膨らみ、7月には過去最高の368億ドル(財のみの国際収支ベース、季節調整前の額)に達したことがある。

 中国の報復関税による大豆価格の下落で打撃を被った大豆産地のアイオワ州では、今回の中間選挙の知事選において、現職の共和党候補が勝利した。地域の産業に損害を与えた大統領と、同じ政党の候補者がなぜ勝てたのか。それは、アメリカ人の間で、中国脅威論がかなり浸透していることによる。

 シカゴ・グローバル評議会が10月に発表した分析結果によれば、アメリカ人の39%が中国は「重大な脅威」になりつつあると考えている。ただし、中国に対する脅威認識は、国際的テロリズム(66%)、北朝鮮の核開発(59%)、イランの核開発(52%)に対するものよりも低く、「潜在的脅威」として挙げられた12項目の中では8番目にすぎない。また、対中脅威認識が56~57%を維持していた1990年代と比較すると、現在の方が対中脅威論は弱まっていると見ることもできる。

 とはいえ、ジョージ・W・ブッシュ政権期に30%台まで下がった対中脅威認識が、オバマが米大統領選に当選した2008年から40%に上昇して以降、ほぼ同じ割合を保っている事実を見逃してはならないだろう。

拡大(出典:シカゴ・グローバル評議会調査)

 問題は、「中国の脅威」の中身である。

 アメリカ人は、中国を軍事的な脅威と見る者(39%)と、経済的な脅威と見る者(42%)に分かれている。しかも、中国の経済的脅威をより深刻にとらえる傾向が顕著なのは、共和党支持者よりも、むしろ民主党支持者の方だ。民主党支持者の54%が、中国との経済戦争の可能性を、中国の台頭そのものよりも強く懸念している。これに対して、同様の見方をする共和党支持者は28%にすぎない。

 伝統的に、民主党の支持基盤は労働組合だ。そして、製造業の労働組合は常に、自国の産業を保護する貿易政策を求めてきた。米労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)のリチャード・トラムカ議長は2018年3月、鉄鋼・アルミニウムに輸入関税を課したトランプ政権の貿易政策を、「偉大なる第一歩」と称賛し、労働者にとって素晴らしい政策だと評価している。

 民主党支持者がトランプ政権の保護貿易に賛成していることが、中間選挙において、アイオワなど農業州での共和党の勝利や、外交政策の専門家が集う上院での共和党の過半数維持の一因となったのだろう。


筆者

山本 章子

山本 章子(やまもと・あきこ) 琉球大学講師

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)など。

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