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中間選挙でトランプ対中外交は信任されたのか

山本 章子 琉球大学講師

オバマの対中政策の遺産

 中国の脅威が軍事的なものか、経済的なものかで見解が割れているのは、アメリカ人が中国の「力」の源をどのように見ているのか、ということとも関係している。

 シカゴ・グローバル評議会の調査によれば、アメリカ人の47%が、中国の対外影響力を支えているのは経済力だと考えているという。中国の技術革新が対外影響力の梃子となっている、と考えるアメリカ人も21%にのぼる。

 他方、中国の軍事力がその対外影響力の源だと見ているアメリカ人は、わずか12%にすぎない。これは、自国の対外影響力の源泉を軍事力に求めるアメリカ人が35%にのぼり、経済力に求めている24%を上回っていることと関連する。アメリカの軍事力が他の国々を圧倒しているかぎり、中国の軍事的な影響力は限定的なものにすぎない、というアメリカ人の自信の表れであろう。

 しかしながら、共和党支持者や共和党系の外交・安全保障専門家の間では、オバマ前政権が、中国の唱える「核心的利益」や「新型大国関係」を認めるかのような態度をとったことで、対中抑止力が弱まり、中国の南シナ海進出などにつながったという認識が強い。つまり、オバマ政権の対中政策が、中国の軍事力はそれほど評価しないが、中国の軍事的脅威は強く認識する世論を生みだしたと推測できる。

拡大ホワイトハウスで会見するオバマ氏=2017年1月18日、ワシントン

 今回の中間選挙では、トランプ大統領が精力的に、接戦に苦しめられる共和党候補を支援して遊説を展開したのに対抗して、オバマ前大統領が各選挙区の民主党候補の応援演説に回った。だが、オバマの外交的遺産が、トランプの対中強硬外交を、ほぼ唯一の超党派の合意が得られる政策たらしめているというのは皮肉なことだ。

 加えて、ジェームズ・マティス国防長官の存在が、トランプ政権の対中政策を安全保障面から支えているという指摘もある。彼は、オバマ前政権では、2015年のイラン核合意を批判して、中央軍司令官を解任されている。だが、トランプ政権では、閣僚や大統領側近がたびたび入れ替わる中で、政権発足当初から閣僚として重きをなしてきた貴重な人物である。

 マティスは、2017年12月に発表した国防計画で、中国やロシアを「戦略上の競争相手」と位置づけ、「テロとの戦い」の舞台である中東から、東アジアへと米軍配備の比重を移行して、両国に対抗するという新たな戦略を打ち出した。同政策と、経験の豊かさや高い専門性、閣僚にふさわしい人格なども総合して、マティスは、連邦議会の共和党議員たちだけではなく、民主党議員たちからも高く評価されている。トランプが何をツイートしようとも、マティスがいれば大丈夫だというわけだ。


筆者

山本 章子

山本 章子(やまもと・あきこ) 琉球大学講師

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)など。

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