早稲田大学で11月12日に日韓シンポジウム
2018年11月08日
朝鮮半島は今、大きく動いている。
昨年は、北朝鮮が核実験やミサイル発射実験を繰り返し、米国の武力攻撃の可能性も語られるなど、緊迫した情勢が続いた。しかし今年に入り、2月の平昌(ピョンチャン)五輪を機に南北関係が一気に好転した。
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領による南北首脳会談は、すでに3回開かれた。6月には金委員長とトランプ大統領による史上初の米朝首脳会談が、シンガポールで開かれた。金委員長は中国の習近平(シーチンピン)国家主席とも3度会談するなど、首脳外交が華々しく繰り広げられてきた。
北朝鮮は、核実験もミサイル発射実験もやめた。北東アジアの緊張が緩和され、昨年より「安全」になったのは間違いない。金委員長は核をめぐる政策に関して大きな決断をしているというのが、多くの専門家の見方だ。しかし、それは一方的な武装解除に向かうのではないのも事実だろう。
文大統領は9月、平壌を訪れ、金委員長と会談、平壌共同宣言を発表した。そこでは、かつて韓国企業が進出していた北朝鮮の開城工業団地や、金剛山観光事業を再開するとともに、南北の道路や鉄道を連結するなど経済協力を進めることがうたわれている。
ただし、これらは北朝鮮への経済制裁が解除されないことには進まない。アメリカのトランプ政権は今のところ、北朝鮮の非核化が実現する前に経済解除をすることは考えていないようだ。文政権の政策には、こうした根本的な矛盾も横たわる。
2回目の米朝首脳会談に向け、11月8日にニューヨークで開かれる予定だった、アメリカのポンペオ国務長官と北朝鮮の金英哲(キムヨンチョル)党副委員長との高官協議は延期された。非核化をめぐる米朝の考え方の隔たりは、まだまだ大きいようで、非核化への道筋は依然として見えてこない。
こうした状況のもと、文政権が目指す朝鮮半島をめぐる平和体制をテーマにしたシンポジウムが11月12日、都内の早稲田大学で開かれる。
韓国政府のシンクタンク・統一研究院の金錬鉄(キムヨンチョル)院長が基調講演をし、日韓の専門家やジャーナリストらと意見を交換する。文政権の対北朝鮮政策のブレーンから、韓国が目指す平和構想を聞く絶好の機会となる。中間選挙後のトランプ大統領の外交政策や、日本の植民地時代の「徴用工」に関する韓国最高裁判決をめぐって、ぎくしゃくする日韓関係も議論となりそうだ。
北朝鮮の工場管理制度に関する研究で博士号を取得した金院長は、南北の融和政策を進めた盧武鉉(ノムヒョン)政権に入り、南北対話や6者協議などの実務に携わった。邦訳された著書に『冷戦の追憶 南北朝鮮交流秘史』(平凡社)がある。
第1セッションは安全保障がテーマ。朝鮮半島をめぐる安全保障を専門とし、米国の東アジア政策にも詳しい道下徳成・政策研究大学院大学教授が「終戦宣言と韓国の安全保障」について報告する。
第2セッションのテーマは北朝鮮経済と北東アジアの経済協力。北朝鮮をたびたび視察し、日本で数少ない北朝鮮経済の専門家、環日本海経済研究所(新潟市)の三村光弘主任研究員が「北朝鮮経済~改革・開放の時代」というテーマで報告する。
シンポジウム「朝鮮半島平和体制の争点と展望」
11月12日午後2時~6時半。東京都新宿区の早稲田大学小野記念講堂で開催。入場は無料、事前申し込み不要。韓国統一研究院と早稲田大学韓国学研究所(所長・李鍾元教授)などが主催する。
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