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[36]徴用工判決、日韓の受け止め方に思うこと

伊東順子 フリーライター・翻訳業

判決後に支援者の前で涙ぐむ元徴用工訴訟の原告、李春植さん(中央)と亡くなった元徴用工の妻(左)=30日、ソウルの大法院前20181030韓国大法院の徴用工判決後、支援者の前で涙ぐむ原告の李春植さん(中央)と亡くなった元徴用工の妻(左)=2018年10月30日、ソウル

一般の韓国人の反応

 残念ながら、韓国の人々はあまり関心をもっていない。いわゆる「徴用工」(韓国では「強制動員被害者」という)の問題だ。判決翌日には、そのニュースが各新聞のトップを飾り、社説なども書かれたが、それっきり。テレビなどはほとんど取り上げないし、ネットでの意見表明も大したことはない。一部日刊紙などでは果敢に批判する論調の知識人の投稿もあるが、それは本当に一部であり、いつになく反応はにぶいと思う。

 理由は3つほど考えられる。

 まずは大統領府が意見を表明していないこと。どこかから強力な意見が出て初めて、それに賛成や反対という形で発言が出てくる。だが、誰かの意見を待たず、事実をもって自分で考えることが苦手な人が多いのは、韓国に限ったことではない。

 次に、韓国でネット言論をリードする若い世代が、この問題に関心をもっていないこと。「それって、何?」(30代・女性)と徴用工問題そのものを知らない人もいるし、「もう解決したのに……。くどい」(20代・女性)という意見も聞いた。

 さらに重要なのは、この判決が韓国の人々にとっても、非常に「厄介なもの」であることを大人たちが直感的に見抜いているからだ。

 韓国の人々は困惑している、と言っていい。「韓国の一般の人々はどう思っているか?」という編集部からの質問には、そう答えるしかない。いろいろな人に意見を聞いてみたが、少しでも自分で考える習慣のある人々は、この問題の難しさに「被害者の方は高齢だし、生きているうちにこの判決が出てよかった」「でも、現実的には、政府としても困るんじゃないかな」(50代・男性)と言う。

 韓国の人々の困惑の理由のうち、私でもすぐに気づくことを言えば、この「徴用工問題」は「従軍慰安婦問題」などとは違い、潜在的な「当事者」がとても多いということだ。そこで、否が応でも金銭的な補償に耳目が集まり、「誰かが得する」的な話になってしまう危険がある。

 日本では従軍慰安婦問題と同じように理解されている向きもあるようだが、韓国での印象はずいぶん違う。従軍慰安婦問題は「名乗り出ること」がそもそも勇気のいることであり、そこを突破した女性たちの行動は特別な敬意の対象となった。そこでは日本に対しての「請求権問題」も、金銭面は二の次であり(一部の日本人の想像とは違い)、あくまでも歴史認識や女性の人権についての問題提起だった。

 一方、徴用工問題には当事者が名乗るのを躊躇するような理由はなく、その滞在的な人数は遺族を含めるととてつもないことになる。

 「判決後、2日間で政府の担当部署に計620件の問い合わせがあった。『私も訴訟できるのか』『賠償するのは日本政府か、日本企業か』という問い合わせが多いそうだ。訴訟のやり方を尋ねる人もいると聞いた」(「韓国人徴用工判決とは何だったのか 韓国人記者が語り合う」) 

 韓国の人々の「困惑」については、この座談会記事がとてもわかりやすい。

「解決済み! もう謝っただろ!」と怒る「加害者」

 一方で、日本側の反応は早かった。政府はすぐに見解を表明したし、テレビのワイドショーやネットなどでは、専門家以外の皆さんも居丈高に韓国批判をしているようだ。その多くは「すでに解決されたものを蒸し返すのか?」といった主張だ。

 ネット上も韓国叩きの大合唱で、そちらには明らかな事実誤認や民族差別発言なども混在しており、辟易する。そういう人に限って、「すでに何度も謝罪したし、金も払った。もう解決済み!」といばるので、びっくりしてしまう。通常の事案で、「加害者」がここまで居直ったら、「反省がない。再犯の恐れあり」とみなされるのではないだろうか。

 実際、この「徴用工問題」がここまで長引いてしまったのは、

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