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徴用工判決めぐる「いやな感じ」の正体

内にも外にも戦争被害者への補償に冷淡な日本司法の風土が、日韓対立の背景にある

市川速水 朝日新聞編集委員

日本が最重視する「基盤」そのものが「手抜き工事」だった

 あちこち、何かおかしくないだろうか。

 安倍首相が非難した相手は誰なのだろう。判決を出した韓国大法院ということになるのだろうか。とすると、「2国間の約束があるのに、それに反する判決を出した」ことを批判したのだろうか。他国の司法機関の判決を「あり得ない」と評価する根拠がどこにあるのだろうか。それとも、司法判断の流れに逆らわなかった文在寅(ムン・ジェイン)政権を非難しているのだろうか。

 河野外相の言う「法的基盤」とは日韓基本条約や日韓請求権協定のことを指すが、判決は、請求権協定の文言の「解釈」を論じたもので、「法的基盤」「根本」である協定は揺らいでいない。「完全かつ最終的な解決」に沿う判決を出すべきだという意味で言っているのであれば、この請求権協定には、「何が」最終的に解決したのかが明示されていない。

 そもそも、有償・無償の経済協力という形で請求権協定を決着させた日韓国交正常化交渉は、1910年の日韓併合条約の効力や戦争被害者の処遇などを棚上げして妥結したものだった。この点は先日、この欄で発表した「徴用工判決、日本は『あり得ない』だけでいいのか」でも触れた。

 つまり、日本が最も重要視しているかのように掲げる「基盤」は、基礎工事そのものが「手抜き工事」だったのだ。何も手を加えずに半世紀以上放置した結果、手抜きが表面化して実態に合わないこともあるだろう。

 韓国側の対応も事態を悪化させるばかりだ。メディアを含め、最高裁の戦後補償不要という論理を「親日」のように敵視しているかのようだ。外務省も「国民感情」を前面に出し、ナショナリズムをあおっているように見える。

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筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

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