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拡大豆のこくが口いっぱいに広がるダルカレー(写真はいずれも筆者撮影)
 愛知県豊川市、国府駅からのどかな県道沿いを東へ進んでいくと、ログハウス風のおしゃれなお店から、香ばしいスパイスの香りがただよってきた。誘い込まれるようにその扉を開けると、温かみのある木のテーブルや壁に、色とりどりの鮮やかな装飾がなされ、眺めているだけでもどこかわくわくとした気持ちが湧いてくる。アジアンダイニング「ポカラ」のFC豊川八幡店、「ようこそ」とキッチンの奥からくったくのない笑顔を見せてくれたのが、ネパール出身のケーシー・ディパック さん(39)だ。この店は妻のムナさんが店長を務め、ケーシーさんも時折手伝いに顔を出しているという。「二階のスペースは、ネパールから布や小物を取り寄せて、一から 自分で作り上げたんです」と誇らしげに客室を見回した。

拡大ケーシーさん。店名「ポカラ」はエベレストへの入り口ともいわれる街で、絶景を観ようと世界中から人が集うのだという

拡大手作りのぬくもりが溢れる店内、二階席は親子連れてにぎわうことが多いという

 定休日をお借りしての取材だったこともあり、私が入店した直後に若い女性たちが店内を覗き、「あらら、今日はお休みなの」と残念そうに帰っていく姿が見えた。その様子からも、この店が地域の人気店であることが伺える。

 ケーシーさんが手がけてくれたのはカレーや野菜の炒め物、漬物、ライスなどが盛られたネパールの定食「ダルバート」だ。豆をベースにしたダルカレーのまろやかな舌触りと、スパイスの辛さが食欲をそそる。強火で焦げ付かないよう手際よく混ぜながら、「カレーと一緒に食べられるように」とキノコや砂肝の炒め物、カリカリに揚げたゴーヤまで次々に仕上げていく。

拡大いくつもの鍋を火にかけながら、手際よく仕上げていくケーシーさん

拡大揚げたてのゴーヤは、カレーとの相性抜群だ

拡大「他のカレーも味わって」とほうれん草のカレーも手がけてくれた

辛い食事にうれしいラッシー

 「故郷の村では家の近くに中学校がなかったので、小学校を卒業してからしばらくは一人暮らしだったんです。自分の身の回りのことは自分でやる。料理もその時に覚えました」というケーシーさん 。ボリュームたっぷりの料理に加え、アチャルと呼ばれる玉ねぎ、生姜、にんにくにクミンシードを混ぜた漬物を添えてくれた。そして辛い食事 にうれしいのが、牛乳とヨーグルトを混ぜ合わせて作るラッシー だ。ケーシーさんが作るラッシーはとろみがあり、飲み物、というよりも、デザートのような感覚で楽しめる。「ほら、もっと食べて」と、お皿が空になる度にケーシーさんがまたドンッとおかずやご飯を盛ってくれる。夢中で頬張る私を見ながら「ネパールではこうして、お客さんを全力でおもてなしするんです」と、少し顔をほころばせてくれた。

拡大豆スープカレーとライスのほか、野菜炒めやキノコなどをふんだんに盛って頂いたダルバート

拡大「キムチのように食事に添えて食べる」というアチャル

拡大牛乳のうまみが凝縮されたラッシー

 ケーシーさん自身はスパイスの輸入販売を手がけ、インド、ネパール料理店や、日本のラーメン屋さんとも取引がある。しかし順風満帆に見える日本での生活も、今に至るまでの道のりは壮絶なものだった。

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筆者

安田菜津紀

安田菜津紀(やすだ・なつき) フォトジャーナリスト

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、カンボジアを中心に、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。写真絵本に『それでも、海へ 陸前高田に生きる』(ポプラ社)、著書に『君とまた、あの場所へ シリア難民の明日』(新潮社)。『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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