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小さな「ブルーウエーブ」で終わった米中間選挙

民主党の「青い波」はなぜ、大きくならなったのか?2020年大統領選の行方は

芦澤久仁子 アメリカン大学講師(国際関係論)及びジャパンプログラムコーディネーター

「ブルー・ウエーブ」は起きなかったのか?

 ということは、筆者がWEBRONZAの前回の論考「アメリカ民主党は本当に勢いがあるのか」で触れた「ブルー・ウエーブ」(民主党の青い波)は、結局起きなかったのだろうか?

 今回の投票結果をもう少し詳細に見ると、答えが見えてくる。

 まず、全国の投票数で見ると、民主党は共和党よりも500万票近く多くの票を集めた。2016年の大統領選での得票数差が約300万票(クリントン候補者が多く得票)だったことを考えると、今回の中間選挙における民主党への投票者たちは、共和党側に比べてより盛り上がっていたと言える。

ニューヨークタイムズによる下院選挙区の投票者動向の分析拡大ニューヨークタイムズによる下院選挙区の投票者動向の分析(ニューヨークタイムズのHPから)
 また、ニューヨークタイムズによる下院選挙区の投票者動向の分析によると、選挙区内での民主党候補者支持の率が2016年の時よりも増加した選挙区は、全435区のうちの317区と、全体の7割以上を占めた。

 その317区には、もちろん今回共和党から民主党になった選挙区が含まれる。その中で民主党への振れが最も大きかったのは、ダラス市周辺のテキサス州第32区で、その増加率はなんと80パーセント近くに達する。共和党から民主党へひっくり返った選挙区すべてを平均すると、21パーセントの増加率だった。

 また、317区の中には、最終的に共和党候補者が勝った選挙区(現時点で198議席)のうちの171区も含まれる。これは、従来から共和党が強い選挙区の多くで、民主党支持が増えたことを意味する。

 ただし、共和党支持の比率が増えた選挙区も80区余り存在したので、全選挙区の平均では民主党支持の割合は約10パーセントの増加となる。それでも、全国レベルの民主党支持の割合は、2016年に比べて1割増えたことになる。

下院での民主党の勝利を受け、同僚議員らと喜ぶ同党下院のペロシ院内総務(右)=2018年11月7日、ワシントン拡大下院での民主党の勝利を受け、同僚議員らと喜ぶ同党下院のペロシ院内総務(右)=2018年11月7日、ワシントン

州政府レベルでも重要議席を獲得

 こういった全国選挙区の数字に加えて、州政府レベルの結果も見過ごしてはいけない。

 今回の中間選挙では36の州で州知事選挙が行われ、これまで共和党知事だった州のうちの7州で民主党候補者が勝利した。この7州には、2年前の大統領選でトランプ支持基盤となったラストベルト地帯のミシガン州とウイスコンシン州、そして伝統的な保守派地盤のカンザス州も含まれる。貴重な勝利と言えよう。

 その結果、去年の秋のニュージャージ州とバージニア州知事選での民主党勝利を加えると、トランプ政権が誕生して以降、9つの州のトップが共和党から民主党へと動いたことになる。加えて、フロリダ州とジョージア州の州知事選で(両方とも現職は共和党)まだ最終結果が出ておらず、民主党知事がさらに増える可能性が小さいながらも残されている。

 同時に、州議会レベルでも民主党は議席を増やし、これまで共和党支配の州議会(合計33州)のうちの6州で政権党の立場を奪回した。

 ちなみに、これら州政府レベルの選挙結果は、国政選挙に直接の影響を持つ。連邦議会の下院の選挙区区割りは、それぞれの州政府の管轄であり、知事と州議会の少なくともどちらかを抑えることは、今後の選挙区割の際に非常に需要となるからだ。

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筆者

芦澤久仁子

芦澤久仁子(あしざわ・くにこ) アメリカン大学講師(国際関係論)及びジャパンプログラムコーディネーター

ワシントンDC在住。東京生まれ。慶応大学経済学部卒業。テレビ東京勤務後(ニュース番組制作等担当)渡米。2005年にタフツ大学フレッチャー法律外交大学院博士課程(国際関係論)を終了し、英国オックスフォードブルックス大学(准教授)を経て2012年から現職。また、米国ウッドローウイルソン国際学術センター、東西センター、ライシャワー東アジア研究所に招聘研究員として滞在。主な研究分野は日本外交、日米関係、アジア地域機構、グローバルガバナンス。研究論文は、International Studies Review, Pacific Review, Journal of Peacebuilding and Development等の英文学術誌および編著本に多数発表。著書、Japan, the U.S. and Regional Institution-Building in the New Asia: When Identity Matter (Palgrave McMillan)が、2015年度大平正芳記念賞を受賞。

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