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小さな「ブルーウエーブ」で終わった米中間選挙

民主党の「青い波」はなぜ、大きくならなったのか?2020年大統領選の行方は

芦澤久仁子 アメリカン大学講師(国際関係論)及びジャパンプログラムコーディネーター

禁じ手なしのトランプ選挙

中間選挙を前に最後の演説をするトランプ米大統領=2018年11月5日、米ミズーリ州ケープジラード拡大中間選挙を前に最後の演説をするトランプ米大統領=2018年11月5日、米ミズーリ州ケープジラード

 このように見てくると、「ブルー・ウエーブ」は確かに起きていた、と言えるのだが、その波は、民主党に議席数の上での「大勝利」をもたらすまでの大きさには至らず、いささか中途半端な「小玉サイズ」で終わったのも事実である。

 その理由として、次の二つが考えられる。

 まずはトランプ大統領の選挙のやり方が、その是非は別にして、非常に効果的だった。上院での共和党勢力の維持に焦点を絞り、テキサス、ミズーリ、インディアナといった重点州を週末ごとに訪問。お得意の「移民攻撃」と「主流メディア攻撃」を中心に、支持者達の怒りと憎悪の感情を扇動し、盛り上げる作戦を徹底した。

 その作戦のためには、文字通り手段を選ばなかった。演説会場に大統領専用機「エアフォースワン」で乗りつけるパフォーマンスで盛り上げ、明らかに事実とは違うことも平然と繰り返し、支持者を煽(あお)り立てた。

 実際、ワシントンポスト紙のファクト・チェッカーによると、一回の選挙応援演説でトランプ大統領は、事実と異なる発言(例えば「民主党は急進的な社会主義者だ!」)を35回から45回もしている。これにツイッターやメディアインタビューを含めると、「嘘発言」は、中間選挙前の7週間で一日平均30回にものぼったそうだ。

 大統領就任から9ヶ月間での「嘘発言」は、1日平均で5回だったことを考えれば、中間選挙戦術として確信的に「嘘発言」を多用していたことは明らかである。

 ただし、今回の上院の改選対象35議席は、民主党現職にとって不利な州が相対的に多かったので、その点ではトランプ大統領はラッキーだったと言える。それでも、この「禁じ手無し」の支持者扇動作戦が、伝統的な共和党州における民主党「ブルー・ウエーブ」への防波堤の役割をしたのは確かであろう。

民主党には不利な選挙区構造

米中間選挙で投票用紙に記入する有権者ら=2018年11月6日、米メリーランド州シルバースプリング拡大米中間選挙で投票用紙に記入する有権者ら=2018年11月6日、米メリーランド州シルバースプリング

 もう一つの理由として、下院選挙区が民主党にとって相対的に不利な構造になっていることがあげられる。

 民主党支持者が都市部に集中しているため、民主党が1議席を増やすためには、共和党に比べてより多くの得票数を獲得しなければならない。その状況が、最近行われた「ゲリマンダリング」と呼ばれる恣意(しい)的な選挙区割りのためにさらに悪化している、とされているのだ(ニューヨーク大学、Benjamin Center for Justiceレポート参照)。

 実際、今回の選挙での全体得票数では民主党が共和党を500万票近く上回り、その得票数差は最終的に5~6パーセント・ポイントの間と予測されている。この差で、民主党は下院の32議席増やしたわけだ。

 これを、オバマ政権下で共和党が大躍進した2010年の中間選挙と比べると、共和党の得票数は6.8パーセント・ポイントで民主党を上回ったのだが、その際、なんと63議席も増やしている。つまり、得票数差の比率は比較的近いのに、増やした議席は共和党が倍以上となっている。

 単純に比較することは出来ないが、民主党が議席を増やすには、共和党より多くの得票が必要なことが、この例からも浮かび上がる。

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筆者

芦澤久仁子

芦澤久仁子(あしざわ・くにこ) アメリカン大学講師(国際関係論)及びジャパンプログラムコーディネーター

ワシントンDC在住。東京生まれ。慶応大学経済学部卒業。テレビ東京勤務後(ニュース番組制作等担当)渡米。2005年にタフツ大学フレッチャー法律外交大学院博士課程(国際関係論)を終了し、英国オックスフォードブルックス大学(准教授)を経て2012年から現職。また、米国ウッドローウイルソン国際学術センター、東西センター、ライシャワー東アジア研究所に招聘研究員として滞在。主な研究分野は日本外交、日米関係、アジア地域機構、グローバルガバナンス。研究論文は、International Studies Review, Pacific Review, Journal of Peacebuilding and Development等の英文学術誌および編著本に多数発表。著書、Japan, the U.S. and Regional Institution-Building in the New Asia: When Identity Matter (Palgrave McMillan)が、2015年度大平正芳記念賞を受賞。

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