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連合は与党陣営へ。新宿区長選でも負けた野党共闘

沖縄以外で勝てない野党共闘。結束して掲げる大きな旗印が不可欠だ

山下剛 朝日新聞記者

3割を切った投票率

 新宿区長選は、自民、公明が推薦する現職の吉住健一(よしずみ・けんいち)氏(46)に、立憲民主、共産、自由、社民などが支持する新顔で経営コンサルタント会社社長の野沢哲夫(のざわ・てつお)氏(52)が挑む一騎打ちの構図だった。

 連合執行部と密接な関係にある国民民主党は態度を鮮明にせず、どちらも応援しなかった。

 開票結果は以下の通りだ。

吉住健一 49353票(得票率67%)
野沢哲夫 23973票(得票率33%)
投票総数 74429人(投票率28.24%)

 最初に指摘しなければならないのは、投票率の低さだ。投票率3割を切る選挙で、野党が、組織票で勝る与党(しかも現職)を破ることはほぼないだろう。低投票率の理由は、有権者を引き寄せる争点をつくれなかったことに尽きる。つまり、盛り上がりに欠けたのだ。

 都心の選挙はおしなべて投票率が低い。品川区長選は32.71%。目だった争点もなく、投票率が3割に届かなかった新宿区長選も、無党派層が投票所に足を運ばなかった結果、連合を含む組織票を固めた与党系現職が圧勝したといっていい。

現職区長を安倍政権に重ねた野党

 野党共闘の野沢氏は、吉住区政を「デモの出発地に使える区立公園を4つから1つに減らした」「65歳以上の個人情報を防犯目的で警察に提供した」と批判した。安倍政権で「言論統制」が進んでいるとの認識の下、吉住区政を安倍政権に重ね合わせて批判し、無党派層を取り込む戦略だった。

拡大住宅街で街頭演説をする野党共闘候補の野沢哲夫氏=新宿区若葉2丁目

 野沢氏の応援に立った立憲民主党最高顧問の海江田氏はさらに国政レベルの対決を持ち込む姿勢を鮮明にし、「吉住区政は安倍政権と通じるものがある。これは憲法を守れという闘いだ」と訴えた。

 けれども、「憲法問題」は区長選の争点として広がらなかった。

 そもそも区長選でなぜ憲法なのかという疑問は野沢陣営内にもあった。沖縄県知事選で与党が携帯電話料金の値下げを主張して反発を浴びたのと相似している。デモの出発地に使える区立公園を減らしたことへの批判には「デモに参加する人は限られ、共感を得にくい」との声が陣営内からも出た。

 同様の理由で、現職の吉住氏を安倍政権と重ね合わせる主張も、広がりを欠いた。

 しかも吉住氏は、与謝野氏の秘書を務めた後、新宿区議、東京都議へと転じており、安倍晋三首相や首相の出身派閥・清和会(現細田派)に近いわけでもない。選挙中盤の演説会で、吉住氏はこう訴えていた。

拡大演説会で語る、自公が推した現職の吉住健一氏=新宿区高田馬場1丁目

「新宿区長選に就任したとき、私設秘書を持たないようにしようと考えた。どうしても私の名刺を持った人間が都庁に行ったり、国に行ったり、最も危ないのは区役所に来たりすると、どうしても私への忖度が生まれてくる」

 安倍政権の森友・加計問題に対する批判と受け取るのが自然だろう。安倍政権批判が新宿区長選に飛び火しないようにうまく立ち回ったといえる。

 こうした「安倍隠し」は来年夏の参院選でも繰り返される可能性は高い。与党候補も森友・加計問題への苦言を述べることは十分にありえる。つまり、スキャンダル批判だけでは、与野党の争点をくっきりさせ、無党派層の関心を引き寄せ、投票率を大きく引きあげることは難しいだろう。

 そして、与野党激突の構図をぼかすのに大きな役割を果たしたのが、連合だった。

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筆者

山下剛

山下剛(やました・ごう) 朝日新聞記者

1999年、朝日新聞入社。高知、京都総局、大阪社会部を経て、2008年から政治部。首相官邸や自民党、民主党を担当し、第2次政権発足前の安倍晋三首相の番記者などを務める。2013年に世論調査部に移り、世論調査や選挙の情勢調査、出口調査に携わる。2016年からは地域報道部。

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