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韓国の教育熱に確実に巻き込まれている私

「賢明なオンマ(お母さん)」になるプレッシャーに潰されそう!

藏重優姫 韓国舞踊講師、仁荷工業専門大学語学教養学科助教授

小学校の英語先生が「英語の塾に通って!」

 ラジオによると、小学生の私教育の一か月の平均が50万ウォンだとか。中学生の子どもを持っているあるお母さんは、学習塾一科目30万ウォンで、英語、数学、国語の三科目なら、毎月90万ウォンも要ると言います。私のように子どもが二人だと、二倍という事になりますので、恐ろしい話です。

 学習塾でそれほどかかるのですから、芸術やスポーツ関係の習い事は、小学校高学年からは習わせない傾向にあるのも納得が行きますし、わざと子どもは一人!というのも理解できます。

 この私教育。私は「まあ、やりたい人たちだけがやれば?自分は自分。うちの子はうちの子だし」と考えていましたが、自分を貫くのはなかなか難しいものです。

 ある日、娘が学校から帰ってきてこんなことを言い出しました。「英語の先生が、学校の英語教育だけでは足りないから、英語の塾に通いやって~」と。韓国では小学校3年生から英語の授業が始まるのですが、「学校の先生にプライドはないんかい!?」のツッコミよりも、小学校3年のレベルで英語塾が必要なのか?と少し不安に。

 また、バドミントン・サークルの友達は「受験戦争は、お母さんの情報戦争でしょ」と言い、いくら私が「自分は自分」と思っていても心は揺らぎ始めます。なぜなら逆に考えると、子どもが進路に行き詰まったり、後悔するようなことがあれば、それは私の情報収集不足ということにもなりかねないからです。

 英語教育に関しては、現政権が英語の先行教育を禁止するという姿勢をすでに打ち出していますが、学校で良い成績を取らすために塾に行かすという親心は私が見るに、まだまだ健在し続けるでしょう。どの親も自分の子が良い成績を取って欲しいから、一人が塾に通いだすと、我も我もで結局みんな通うことに。

拡大ソウルには日本の公文が参入し、人気が出ている。道端や人の集まる場所で家庭学習の宣伝も(筆者撮影)

 また、韓国では就職に有利で将来職業としても有望だと考えられている理系が人気があります。ですので、私教育で早期英語教育を与え、あわよくば中学校で大学受験程度の英語は終わる。そして、高校では数学や化学に力を入れさせるという親の戦略があります。

 学校は教えるという本来の役割が薄れてしまい、ただ評価する(入試方法によっては、内申が比重を持つことがあります)という機関になってしまっている気もします。


筆者

藏重優姫

藏重優姫(くらしげ・うひ) 韓国舞踊講師、仁荷工業専門大学語学教養学科助教授

日本人の父と在日コリアン2世の間に生まれる。3歳からバレエ、10歳から韓国舞踊を始め、現在は韓国にて「多文化家庭」の子どもを中心に韓国舞踊を教えている。大阪教育大学在学中、韓国舞踊にさらに没頭し、韓国留学を決意する。政府招請奨学生としてソウル大学教育学部修士課程にて教育人類学を専攻する傍ら、韓国で舞台活動を行う。現在、韓国在住。日々の生活は、二児の子育て、日本語講師、多文化家庭バドミントンクラブの雑用係、韓国舞踊の先生と、キリキリ舞いの生活である。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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