2018年11月14日
前稿で紹介したような「下からの」運動に「上から」の政治力が連動して、「愛国心教育」は大きな潮流になっている。
大阪では、2015年の中学校教科書採択で育鵬社が歴史で約27%、公民で約34%を占め(日本教育再生機構発表)、全国的に突出している。これには「維新」の絶大な影響力がある。
2011年、大阪維新の会の創設者の一人でもある橋下徹府知事は、大阪都構想を争点にすべく、知事を辞職し、大阪市長選に出馬、府知事選とのダブル選挙で、勝利した。
橋下市長は、教育委員を自分の意向に沿う人物に入れ替えた。また、2014年には八つあった教科書採択地区を統合、全市を一つの採択地区にした。それまで大阪市の6人の教育委員は各区の意向を尊重せざるをえなかったが、統合の結果、彼らが直接採択できるようになった。
右派団体のNPO法人「教育再生地方議員百人と市民の会」は、地域の学校や教育委員会を回って、卒業式などでの日の丸掲揚と君が代斉唱を申し入れたり、右派的な教科書採択の働きかけをしたりなどの運動に地道に取り組んできた。同会の手法を増木重夫事務局長は「ほふく前進」だという。だが、橋下氏の登場で事態は一変した。
「橋下さんの登場は強烈でしたね。日の丸・君が代の問題も教科書の問題も橋下さんが府知事、市長になったら一発ですよ。私ら今まで何をしてたんだろうと思うくらい。首長が代わればみんな変わる」
大阪市内の小学校教師、伊賀正浩さんは増木さんとは反対の立場だが、橋下氏の登場で大阪が一変したという認識では一致する。
「橋下徹氏が府知事になってから、右翼的なものがワッと出てきましたね」と言う。「右翼的なもの」とは、ヘイトデモが頻発したり、公益財団法人「モラロジー研究所」と称する団体が教員向けに「道徳の教科化に向けた課題を共有し、解決に向けたプログラムを企画していく」研究会を開催したり、府と市が戦争と平和の調査研究と展示のために創設した「ピースおおさか」(大阪国際平和センター)から「自虐的だ」と南京大虐殺などの展示を撤去させたことなどだ。これらの動きを伊賀さんは、「維新効果」と呼ぶ。
維新は、森友学園を応援していたようだ。元日本維新の会の衆議院議員だった上西小百合さんは、
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