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「徴用工判決」で報じられない「不都合な真実」

山本晴太 弁護士

日本政府の「手のひら返し」

 ところが、時効や国家無答責(国家は不法行為責任を負わないという旧憲法下での解釈論)等の争点について企業や国に対して不利な判断をする裁判例が現れはじめた2000年、日本政府は解釈を突然変更し、あらゆる戦後補償裁判で「条約(サンフランシスコ平和条約、日韓請求権協定、日華平和条約、日中共同声明)により解決済み」と主張し始めた。日本人被害者から補償請求を受けていたときには「条約により放棄したのは外交保護権にすぎず、被害者は加害国の国内手続きにより請求する道が残っているので日本国には補償責任がない」と主張し、外国人被害者から賠償請求を受けると「条約により日本の国内手続きで請求することは不可能になったので日本国には賠償責任がない」と手のひらを返したのである。

 当初国は「条約によって解決済み」との結論だけを定めたのか、法的な説明は訴訟ごとにまちまちであったが、やがて国側の主張は整理され「個人の実体的権利は消滅していないが、訴訟によって行使することができなくなった」という内容にまとめられていった。

最高裁も個人の請求権の存続を認めている

 中国人被害者の事件についての2007年4月27日最高裁判決はこのような国の主張を基本的に受け入れた。

 最高裁は、個人の請求権について民事裁判上の権利行使することはできないことにするというのが「サンフランシスコ平和条約の枠組み」であり、日中共同声明もこの枠組みの中にあるため、この声明で中国は中国国民個人の請求権をも放棄したと述べた。

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筆者

山本晴太

山本晴太(やまもと・せいた) 弁護士

1953年生まれ。92年弁護士登録。 関釜裁判、浮島丸訴訟、光州千人訴訟など、多くの戦後補償訴訟の原告側弁護を担当した。