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パリで感じる「ゴーン事件」の危うさ

日産はフランスの尾を踏んだ? 日本はやはり外国人嫌い? 陰謀説も……

山口 昌子 在フランス・ジャーナリスト

カルロス・ゴーン容疑者の拘束状況を報じる仏の各紙=2018年11月23日拡大カルロス・ゴーン容疑者の拘束状況を報じるフランスの各紙=2018年11月23日

「ゴーン逮捕」に抱く二つの疑念

 日本を騒がせている「ゴーン逮捕」をパリから見ていると、二つの懸念を抱かざるを得ない。一つは、日産はカルロス・ゴーン氏、即ちルノー、即ち三色旗(フランス)というトラの尾を踏んだのではないかということ。二つ目は、日本はやっぱり「攘夷」、「外国人嫌いだ」という印象を外国人に与えたのではないかということだ。

 日本式に言えば、金融商品取引法違反のゴーン容疑者だが、フランス的に言えば、「推定無罪」(ルメール経済相)、まだ刑が確定したわけではないから敬称を付けることにする。西川廣人社長が「逮捕会見」をした際、ゴーン氏を時々、敬称抜きで呼んだと、仏誌が批判していて、ビデオニュースを見たら、確かに「身内だから敬称抜き」ではなく、呼び捨て、悪漢扱いで、失礼な感じがした。ルノーではまだ、最高経営責任者(CEO)だ。

 日を追うにつれ、ゴーン氏の容疑は様々な“悪行”が暴かれて重くなっているが、ルノーは目下のところ、ゴーン氏の任を解く考えはない。しかも、ルメール経済相は日本からやってきた世耕弘成・経済産業相との会談後の会見で、「日産とルノーの連合が協力関係を維持する意思を両国政府は強く支持する」と言明した。

日仏政府な重大な外交案件に

会談に先立ち、握手を交わす世耕弘成経済産業相(右)とルメール仏経済相=2018年11月22日、パリ拡大会談に先立ち、握手を交わす世耕弘成経済産業相(右)とルメール仏経済相=2018年11月22日、パリ
 今やゴーン氏の逮捕は日仏政府の重大な外交案件になっている。西川社長らは、「ゴーン逮捕」の会見時に、日本の経済産業相の急な会談や、フランス政府がピック駐日フランス大使を即、ゴーン氏の拘置所に面会に行かせたことなどを、予想していたのだろうか。

 フランス政府がルノーを“擁護”するのは、単に株を15.01%所有しているからではない。ルノーは1898年創業のフランスの看板会社、基幹企業だ。つまり、「三色旗」を背負っているわけだ。 

 ルノーは第2次大戦後に国営化され、長年、「ルノー公社」と呼ばれた。民営化され、株が公開されたのは1990年代に入ってから。日産とルノーが「アリアンス」という意味不明な言葉を使って資本提携で合意した99年3月の時点で、フランス政府はルノーの株を44%所有していた。


筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在フランス・ジャーナリスト

産経新聞パリ支局長を1990年から2011年までつとめる。著書に『ドゴールのいるフランス』(河出書房新社)、『フランス人の不思議な頭の中』(KADOKAWA)、『原発大国フランスからの警告』(ワニブックスPLUS新書)、『フランス流テロとの戦い方』(ワニブックスPLUS新書)、『ココ・シャネルの真実』(講談社+α新書)、『パリの福澤諭吉』(中央公論新社)など。ボーン・上田記念国際記者賞、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受賞。

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