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ホワイトハウスで記者会見し、CNNのアコスタ記者とやりとりをするトランプ米大統領=ワシントン、ランハム裕子撮影 201811月7日拡大ホワイトハウスの記者会見で、CNNのジム・アコスタ記者を罵倒するトランプ米大統領=2018年11月7日、撮影・ランハム裕子

11月6日(火) いよいよ今日が投票日当日だ。アメリカの有権者はどのような選択をするのだろうか。今日は目まぐるしく動き回るスケジュールとなっている。朝10時半にホテルを出て、まずはミネソタ州のCAIR(Council on American–Islamic Relations)支部へ。

 何とキリスト教会の中にオフィスがあった。そのこと自体がオドロキ。午前11時の約束だったが、少し遅れてJaylani Hussein支部長がやって来た。なぜかイスラム教徒の白人男性が僕らのインタビューの模様を「CAIRから依頼された」として撮影している。支部長はとても理路整然とした人物で、わかりやすかった。出生地主義の撤廃については「憲法に反している」ときっぱりと述べていた。

 その後、ソマリア人移民の多くいる地区にあるInternational High Schoolに取材に行く。ここが滅茶苦茶に面白かった。世界11か国(多くは東アフリカの国から)の173人がここで学んでいた。そこの授業をみさせてもらったが、何と言うか、実にユニーク。有権者の人種、階層、年代によってどのような政党が支持されやすいかを考える授業をやっていた。校長先生も移民出身の人物だが、実に丁寧に対応していただいた。

 その後、イルハン・オマール候補の高校時代の友人宅に行くことになっていたが、約束の時間になってお母さんが現れたかと思うと、だあーっと一方的にかつ精力的に話しまくられ、「コミュニティ・センターにインタビュー場所を変更するわ」と言われ、そこに行ったが一向に姿をみせない。結局すっぽかされたのだが、その分、コミュニティセンターが中間選挙の投票所になっていたので、投票風景や住民へのインタビューができてかえってよかった。住民が次々に訪れていて、これは投票率は相当に高いな、という感触を得た。笑ってしまったのは、白人の比較的若い男性に「投票するにあたっての最優先事項は何?」と聞いたら「マリワナ合法化!」と即答されたこと。

 休む間もなくミネソタ州の民主党の本部のWatch Partyの会場へ。ミネソタの民主党の正式名称は、The Minnesota Democratic–Farmer–Labor Party (DFL)=ミネソタ民主労農党であり、民主党のなかでも最もリベラル、左派の土地柄だ。もともとドイツと北欧系の人々が圧倒的な多数派である。そこに顔を出したが、ここで選挙情勢全般を話すのは適当ではないと判断して、イルハン・オマール候補のVictory Partyの会場(選挙区にあるホテル)へと転進する。

 その判断は間違っていなかった。DFLの会場よりも勢いというか熱気がまるで違った。歌や踊りがすごい。ソマリア移民の女性たちがヒジャブを被りながら大いに踊りまくっている。中東世界を多く見てきたが、こんなに開放的なヒジャブの女性たちをみたことはない。それを面白がってみていたら、歓声とともにイルハン・オマール候補が会場に入場してきた。あとはもみくちゃだ。勝利宣言も感動的だった。下院で最初のイスラム女性議員として、最初の難民出身議員として、最初のヒジャブを被った議員として、声を届けると宣言していた。その後も壇上で家族とともに踊っていた。何しろ司会を務めたのが、彼女の長女の高校生だった。こういう光景を見ていると、民主主義の原型を見せられているような思いになってしまうのだ。必死にぶら下がりのインタビューを試みるが護衛がついていて近づけない。2014年に彼女が右派に襲われたことがあって以来、警備がきびしくなっているとのことだった。

 選挙結果全体では、下院は民主党がとったものの、上院はむしろ共和党が議席を増やして、つまり、今回の中間選挙は、Blue Wave とかPink Waveとか言われていたが「さざ波」程度のWaveでしかなかったということか。疲れ切って宿舎に引き上げる。

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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