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安倍首相がその場しのぎで急ぐ防衛大綱改定

やるべきは国家安全保障戦略のブラッシュアップ

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

その場しのぎの国家安全保障戦略

 なぜ、こんなその場しのぎになるのか。それは、防衛政策のもとになる国家戦略がその場しのぎだからだ。

ホワイトハウスで記者会見するオバマ大統領(左、2017年1月当時)と、トランプ大統領(右、2018年11月)。朝日新聞データベースより拡大ホワイトハウスで記者会見するオバマ大統領(左、2017年1月当時)と、トランプ大統領(右、2018年11月)。朝日新聞データベースより
 13年末に安倍内閣が閣議決定した日本初の国家安全保障戦略に、それは如実に表れている。今の防衛大綱と同様に「10年程度の期間を念頭」とされ、防衛大綱の上に位置づけられた文書だ。

 32ページからなる国家安全保障戦略を見ていく。その趣旨は、冒頭で「国益を長期的視点から見定めた上で、国際社会の中で我が国の進むべき針路を定め」ると述べられている。

 ところが、「国際社会の中で針路を定め」る上でこの文書が最も見通せていないのが、日本が同盟関係を基軸とする米国の動向、つまりトランプ政権の登場に象徴される米国の孤立主義だった。

 例えば、「我が国を取り巻く安全保障環境と国家安全保障の課題」という章では、米国の方針を「安全保障政策及び経済政策上の重点をアジア太平洋地域にシフトさせる方針(アジア太平洋地域へのリバランス)」と記している。

 続く「我が国がとるべき国家安全保障上の戦略的アプローチ」という章の「日米同盟の強化」の項には、「日米両国は、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉等を通じて、ルールに基づく、透明性が高い形でのアジア太平洋地域の経済的繁栄の実現を目指している」とある。

 リバランスもTPPも、国家安全保障戦略ができた頃、2期目に入っていたオバマ政権の看板だった。しかし、国際社会の秩序を保つ「世界の警察官」であることに疲れ、国際社会のルール作りよりも自国第一主義を掲げるトランプ政権で、それらは跡形もなくなった。

 つまり、日本の安保政策の根幹として「10年程度」を見通したはずの文書である国家安全保障戦略が、最も重要なパートナーである米国の動きを気にするあまり、当時のオバマ政権の政策をなぞるにとどまり、3年後のトランプ政権への交代で早々に齟齬(そご)をきたしてしまっているのだ。

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筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)

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