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安倍政権のレガシーと北朝鮮問題

秋山昌廣 秋山アソシエイツ代表 安全保障・外交政策研究会代表

メドが立ちにくい拉致問題

 安倍首相が拉致家族問題を重要な問題として取り上げ、政治的エネルギーを多くつぎ込んだのは間違いない。しかし、現実には、解決の方向に向かうどころか、そのメドも立ちにくい状況となった。

 この問題は、安倍首相に限らず、時の政権、国会議員、民間団体、家族会、特定の個人などが長年にわたり関わり、取り組んできたものであるから、一朝一夕に解決するものではないのはもちろんだ。だが、安倍首相時代にひとつの「大きな転換」があった。

 それは、北朝鮮が拉致問題を無視するかのごとく、核・ミサイル開発に国家の総力を挙げて取り組んだことである。

北朝鮮への制裁を推進した日本

北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)火星15の試射。朝鮮中央通信が2017年11月30日に配信した=朝鮮通信拡大北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)火星15の試射。朝鮮中央通信が2017年11月30日に配信した=朝鮮通信
 核・ミサイル開発は、米国に対する北朝鮮の安全保障戦略とみて間違いない。金正恩・朝鮮労働党委員長のもと、2、3年前からその開発・テストに拍車がかかり、ついに米国の安全保障を脅かす程度まで進展した。

 1990年代以来、北朝鮮の核・ミサイル開発をいかに止めるかは、国際社会の大きな課題であった。ただ、日本としては、常に拉致家族問題が並行的、ないし前面に出て議論され、日本独自の制裁などの対抗措置がとられてきたのが実態である。

 トランプ氏がアメリカ大統領に就任した2年前、安倍首相はいち早くトランプとの親密な関係を築き、信頼を得たうえで、北朝鮮問題の深刻さをトランプに認識させた(と見られている)。北朝鮮のミサイルテスト、核実験がエスカレートするなか、国連の制裁の拡大強化、日米などによる単独制裁の導入、米国の軍事的な圧力などが続く事態となったが、北朝鮮に対するこれらの制裁は、日本が国連において積極的に推進、強化してきた。

 ところが、北朝鮮は一昨年末、核・長距離ミサイル開発は終わったと宣言し、本年初めから対話路線に大きく舵を切った。韓国で開催された平昌冬季オリンピックを利用し、韓国の対話戦術に呼応し、「安全保障上の問題がなくなれば、核を持つ必要はない」とまで表明するに至った。その結果、4月には歴史的な「南北対話」が行われ、6月には、初めての米朝首脳会談も実現した。

重要性を増す非核化の進展

 このように、ここ数年、北朝鮮問題においては、北の核・長距離ミサイル開発をいかに止めるかが課題となり、日本における報道も、北の核実験、ミサイル開発のテスト、米国の厳しい反応などが大半を占めた。日本政府においても、北朝鮮問題と言えば、いかに核開発をやめさせるかが中心課題となり、日本固有の問題といってよい拉致問題は、なかなか表舞台に出てこない状況にあった。

 実際のところ、拉致問題の解決は、北朝鮮の非核化と体制保証が進み、米朝関係の正常化とあわせ出てくるであろう日朝国交正常化のプロセスの中で、具体的な解決を見出さなければならないだろう。とすれば、拉致問題を解決するために、動き始めた北朝鮮の非核化のプロセスを前に進めるよう、日本も努力しなければならない状況にあるのではないか。

 では、はたして北朝鮮の非核化は進むのだろうか。日本の対応も含めて、確認してみたい。

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筆者

秋山昌廣

秋山昌廣(あきやま・まさひろ) 秋山アソシエイツ代表 安全保障・外交政策研究会代表

1940年生まれ。東京大学法学部卒。大蔵省主計局主計官、奈良県警察本部長、東京税関長、防衛庁防衛局長、防衛事務次官などを歴任。退官後、ハーバード大学客員研究員、海洋政策研究財団会長、東京財団理事長、学習院大学および立教大学特任教授を務める。著書に『日米の戦略対話が始まった』(亜紀書房、2002年)