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元「美しすぎる検事」ポクロンスカヤ議員に迫る 

大野正美 朝日新聞記者(報道局夕刊企画班)

ロシアのクリミア編入は「私たちの誇り、正義」

 ポクロンスカヤさんが世界の注目を集めたきっかけは、クリミアの地元政府が2014年3月11日にウクライナからの独立を宣言した時に、33歳でクリミアの検事長に任命された彼女が行った記者会見だ。動画にあるように、ヤヌコビッチ前大統領を逃亡させたウクライナの「マイダン(広場)革命」を「国家クーデター」と、検事の制服姿で激しく非難した。これがロシアから世界に広まり、アニメ化されてブームへとつながった。

クリミアの検事長拡大クリミアの検事長としてウクライナの「革命」を記者会見で批判した時の動画より(https://www.youtube.com/watch?v=tqHkGaEE7WA)

 そのポクロンスカヤさんはインタビューに、白いブラウス、茶色のベストにスラックスという普段着姿でにこやかな笑顔とともに現れた。制服を着た4年前の動画の姿のきびしさとはぜんぜんイメージが違う。ところが話がウクライナのことに及ぶと、表情はたちまち動画のようなけわしいものに変わった。

 ロシアのクリミア編入については、「私たちの誇り、正義です。クリミアが自動小銃でロシアに戻ったなどといわれますが、これはうそです。国境の向こうから過激なウクライナの民族主義者たちがきました。彼らはファシストの支援者です。ロシア人をすべて滅ぼすというイデオロギーを持っています。このため私たちは自分の土地を守りました」と、絶対に正しいとの立場である。

 ウクライナ正教会によるロシア正教会からの独立問題でも、「ロシア国民とウクライナ国民はいつも一つのものです。分けられません。一緒にキリスト教を受容したのです。私たちを結びつける鎖は信仰です。精神性です。敵はまさに精神性に対して分裂をたくらんでいます。でも人びとには精神、歴史、信仰があります。変えることは不可能です」という。

 さらに、「米国のふるまいがあります。クリミアでは住民の自由な意思表示を無視しました。国連憲章にうたわれた民族自決の権利を実行したのに、なぜ明らかに人びとが白いと言っているものを、黒いと言いくるめようとするのか。米国の目的はロシアによくないことをし、分裂を持ち込むことです。ウクライナでの事態も同じです。こうしたことは、ずいぶん前から試みられてきました」と米国の対ロシア政策に強い不信感を示した。

 一方で、日本には好感を持っている。アニメを通じた日本での人気については、「私との関係がこんなふうにつくられているのは、日本人が自分の祖国を愛し、大変に愛国主義的だからでしょう。私の顔をアニメに描くなかで、人びとはそのことを理解して、気に入っています」。

 日ロ関係では、プーチン大統領が平和条約を今年中に無条件で結ぶ提案をしたことに触れ、「大統領の決定を議論しませんが、国同士がすべてのことで、自分の国家的利益のもとで相互関係を発展、強化し、互いの尊敬のもとに独立して誠実に関係を築く。わが国の指導者たちは、そう志向していると思います」と語った。関係改善にとても意欲的だ。


筆者

大野正美

大野正美(おおの・まさみ) 朝日新聞記者(報道局夕刊企画班)

1980年、朝日新聞社入社。水戸支局、外報部、東京社会部などを経て、1986年からサンクトペテルブルクに留学、モスクワ支局勤務は3回計11年。論説委員、編集委員、国際報道部・機動特派員を経て、現在は報道局夕刊企画班。著書に『メドベージェフ――ロシア第三代大統領の実像』『グルジア戦争とは何だったか』(いずれもユーラシア・ブックレット、東洋書店)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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