沢村亙(さわむら・わたる) 朝日新聞論説委員
1986年、朝日新聞社入社。ニューヨーク、ロンドン、パリで特派員勤務。国際報道部長、論説委員、中国・清華大学フェロー、アメリカ総局長などを経て、現在は論説委員。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
その要因の一つが、都市郊外の有権者が共和党支持から民主党支持へと一気に振れたことだ。自由貿易、国際協調といった伝統的な共和党の政策に共鳴してきた穏健保守層の多くが、保護貿易や孤立主義に傾斜するトランプ流に違和感を募らせていたことをうかがわせる。
さらに注目されるのは、都市郊外に住む白人女性層の「離反」だ。治安に敏感で、道徳的価値観を重視する層だが、女性を軽視し、マイノリティーや移民への過度の反感をあおって地域社会の分断を深めるトランプ氏の発言や政策に不安を募らせた結果といえる。テキサス州、フロリダ州、バージニア州などをはじめ全米各地で起きた「郊外の反乱」はまさに今回の中間選挙の最大の特徴だ。
人口動態の変化も理由に挙げられるだろう。アリゾナ州、ニューメキシコ州、テキサス州など南部では、民主党を支持する傾向が強いヒスパニック系の人口が増えている。さらにこれらの州では、ITなどに従事し、リベラルな考えを持つ高学歴層が他州の大都市圏からどんどん移住してきている。東西の両海岸地域は民主、中央部は共和といった従来の政治地図もまた塗り変わりつつある。
◆「郊外の反乱」をとりあげた米メディアの報道から
https://www.businessinsider.com/midterm-election-gop-democrat-vote-urban-suburban-rural-us-2018-11
一方、トランプ氏にとって逆風と言い切れないのは、先述したようにトランプ氏自身が選挙演説に回った地域では共和党の候補が勝利・善戦したことだ(もちろん、そうした地域を選んでトランプ氏が遊説したからでもあるが)。
今回の中間選挙を機に、トランプ氏とは距離を置いてきた共和党のベテラン議員が少なからず引退をした半面、上下両院でトランプ氏が積極支援した75人の候補者のうち半数を超える42人が勝利。大統領のおかげで当選できた「トランプ・チルドレン」の忠誠心はきわめて高く、共和党はますます“トランプ党”へと変貌していきそうだ。
大統領選挙で各州に割り当てられた「選挙人」の数が多く、全体の勝敗の行方に大きく影響するフロリダ州で、接戦の末に知事選・上院選ともに共和党が勝利をおさめたことも2020年の大統領再選を目指すトランプ氏にとっては追い風だ。
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