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中島岳志の「自民党を読む」(4)河野太郎

リベラルを志向しつつも、政策の中核は新自由主義。父からの自立を意識しすぎ?

中島岳志 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授

脱原発

 以上のような、かなり徹底した新自由主義的主張は、原発政策にも向けられます。

 河野さんは3・11以前から日本の原子力政策に疑問を呈しており、特に「核燃料サイクル」政策の巨大なムダを批判していました。

 日本には40トンものプルトニウムが余っており、処理ができずに困っている現状があります。しかし、一方でプルトニウムをもっと取り出そうとする計画が進行します。プルトニウムの再処理工場にかかる費用は膨大で、かつ今後いくらかかるのかの見通しも立っていません。こんな計画を進めていくことにどれだけの意味があるのか。

 なぜ、十数兆円を超える莫大なコストをかけて、当面必要のないプルトニウムを取り出すこの再処理工場を稼働させなくてはならないのだろうか。なぜ、三〇年前に立てた計画を変更し、再処理を中止することができないのだろうか。(③:134)

 この主張は3.11以前の2010年のものです。福島第一原発の事故が起こると、原子力発電所は経済採算性が合わないと主張し、原子炉の新設に待ったをかける言動を繰り返しました。

 河野さんにとって、日本の原子力政策は既得権益の塊に他なりません。電力会社、経産省、政治家、そしてマスコミが癒着し、利益を独占してきた構造こそが問題視されます。

 河野さんは再生エネルギーへの大転換を促し、「2050年までに現在の電力使用量の6割を再生可能エネルギーで発電」すべきことを説きます。また、「電力会社の地域独占、総括原価方式を廃止し、発送電を分離」すべきことを主張します(⑦:162)。

 ここにも規制緩和による市場化の徹底を進める姿が反映されています。河野さんの脱原発論は、新自由主義的政策の延長上で説かれている点に特徴があります。

外国人労働者を積極的に受け入れる

 日本の労働力不足については、積極的な外国人労働者の受け入れが必要と一貫して主張しています。

 河野さんが問題視するのは、従来の研修制度です。これは「現代の奴隷制度」であり、「日本の恥でもあり、一刻も早く廃止すべき」と言います(③:38)。外国人労働者に対しては、きちんと「労働ビザ」を出すべきと主張し、発給の条件として一定の日本語能力を課すことを提言します。(③:38)

 そして、次のように言います。

 労働ビザで入ってきた外国人には、定住、永住ビザへの切り替えや、最終的にこの国の未来を一緒に担っていく気になった者には、国籍取得を可能にする道を開いておく必要がある(③:38)

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筆者

中島岳志

中島岳志(なかじま・たけし) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授

1975年、大阪生まれ。大阪外国語大学でヒンディー語を専攻。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科でインド政治を研究し、2002年に『ヒンドゥー・ナショナリズム』(中公新書ラクレ)を出版。また、近代における日本とアジアの関わりを研究し、2005年『中村屋のボース』(白水社)を出版。大仏次郎論壇賞、アジア太平洋賞大賞を受賞する。学術博士(地域研究)。著書に『ナショナリズムと宗教』(春風社)、『パール判事』(白水社)、『秋葉原事件』(朝日新聞出版)、『「リベラル保守」宣言』(新潮社)、『血盟団事件』(文藝春秋)、『岩波茂雄』(岩波書店)、『アジア主義』(潮出版)、『下中彌三郎』(平凡社)、『親鸞と日本主義』(新潮選書)、『保守と立憲』(スタンドブックス)、『超国家主義』(筑摩書房)などがある。北海道大学大学院法学研究科准教授を経て、現在、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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