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パリは革命前夜? 「黄色いチョッキ」デモの実態

燃料増税に反対する「ジレ・ジョンヌ」によるデモは「マクロン辞任」要求にまで発展

山口 昌子 在フランス・ジャーナリスト

農民、年金生活者……続々と集まる参加者

デモに参加するため、パリ近郊からやってきた農民=2018年12月1日、パリ。筆者撮影拡大デモに参加するため、パリ近郊からやってきた農民=2018年12月1日、パリ。筆者撮影
 午前7時、大通りに通じる横道から屈強な男性4人の「ジレ・ジョンヌ」がやってきた。道路封鎖の警官に所持品と身分証明書を提示し、通行許可になった、正真正銘のデモ参加者だ。「パリから50㌔の地方から来た」と英語で回答。次いで、フランス語で「農民」と胸を張った。フランスで真に尊敬できるのはドゴール将軍と農民だけ、とかねがね思っているので、おもわず、「頑張ってください」という。

 「農業大国フランス」を支えているのは、国土の約53%の農地を約45万所帯(2017年現在)の少数で担っている彼らだ。にもかかわらず、平均年収が1万5000ユーロ、月収1250ユーロだ。過酷な自然と闘いながら、バカンスも取らず、というより取れない厳しい生活環境だ。大型トラクターはもとより地方では車は必需品。今回の増税は排気ガスの多いジーゼルへの課税が特に高い。

ドゴール将軍がアルジェリア独立に関して言った「理解した」という言葉をかいたプラカードを掲げるデモの参加者=2018年12月1日、パリ。筆者撮影拡大ドゴール将軍がアルジェリア独立に関して言った「理解した」という言葉をかいたプラカードを掲げるデモの参加者=2018年12月1日、パリ。筆者撮影
 政府の「環境排気ガス規制」は、2040年までにジーゼル、ガソリン車の廃止を目標にしている。ハイブリッド車や電気自動車への買い替えには、補助金を支給すると決めていて、高価な電気自動車(平均2万ユーロ)の場合は最高6000ユーロの補助金が出る。とはいえ、全産業一律最低保証賃金(SMIC)が1188ユーロ(2018年10月)、サラリーマンの月給が2000ユーロ未満の現状では、「高嶺の花」であることにかわりはない。勢い、「燃料税増より、購買力増」と叫ぶことになる。

 雨がパラつきだした午前8時ごろにやってきたのは、女性1人を交えた7人の集団だ。「パリ在住の年金退職者」と女性が答える。どうやら彼女がリーダーらしい。全員ジーンズ姿で颯爽(さっそう)としている。「年金にかける税金まで増税なんてヒドイ」と女性が言うと、男性たちもうなずく。

 フランスでは昨年来、ガス、電気はもとより、あらゆるものが増税だ。「仲間とは凱旋門で10時集合。何人くるか不明」という。三々五々やってくる彼らの背中には「議会解散」「マクロン辞任」と共に、ドゴール将軍がアルジェリア独立に関し、「理解した」と述べた有名な言葉もかかれていた。

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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在フランス・ジャーナリスト

産経新聞パリ支局長を1990年から2011年までつとめる。著書に『ドゴールのいるフランス』(河出書房新社)、『フランス人の不思議な頭の中』(KADOKAWA)、『原発大国フランスからの警告』(ワニブックスPLUS新書)、『フランス流テロとの戦い方』(ワニブックスPLUS新書)、『ココ・シャネルの真実』(講談社+α新書)、『パリの福澤諭吉』(中央公論新社)など。ボーン・上田記念国際記者賞、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受賞。

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