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続・日韓「いやな感じの正体」

米国やロシアへの配慮と、韓国との向き合い方は、なぜこれほど違うのか

市川速水 朝日新聞編集委員

 

拡大韓国人元徴用工の賠償請求訴訟の判決を受け、首相官邸で取材に応じる安倍晋三首相=2018年10月30日

慰安婦の「心の傷」に触れない首相コメント

 日韓の間で飛び交う「いやな感じ」は強まるばかりだ。慰安婦問題と元徴用工裁判をめぐって、とげとげしく、まるですれ違いの言動が続いているためである。

 韓国は11月21日、慰安婦問題に関する日韓合意に基づく「和解・癒やし財団」を解散すると発表した。日本が拠出した10億円は宙に浮くことになった。

 安倍晋三首相はこう反応した。

「日韓合意は最終的かつ不可逆的な解決だ。国際的約束が守られなければ国と国との関係が成り立たない。韓国には国際社会の一員として責任ある対応を望む」

 コメントとして特段の齟齬はない。2015年12月28日の日韓外相合意が頓挫した責任は、まず韓国が負うべきだろう。

 ただ、「和解と癒やし」の事業には健在の元慰安婦のうち過半数が実質的に日本の税金を受け取っている。事業が完全に失敗したわけではない。

 2015年の日韓外相会談後の発表文では、財団設立の目的とともに「日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行う」ともうたわれた。財団の運営には日本政府も協力するという趣旨であり、これも約束の一部だ。

 安倍首相や日本側の怒りのコメントには、財団の金を受け取った人、反発して受け取らなかった人、それらの人々の心の傷をいかほど慰めることができたかについて全く評価がない。

 さらに、この財団の設立にともない、1995年以来、元慰安婦の支援事業に取り組んできたアジア女性基金のフォローアップ事業が終了した。「日韓合意に基づき類似の事業が予想される」という理由だったが、財団がなくなれば日本側からのフォローアップはどうなるのか。これも言及がない。

 何よりも、15年の合意には共同声明文などの文書もなく調印もない。トップ会談ではなく外相レベルで、10億円という拠出額も直接は合意に盛り込まれなかった。国際的約束とはいえ、国内の批准が必要な条約などとは比較にならない「軽さ」が当初からあった。

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筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

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