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続・日韓「いやな感じの正体」

米国やロシアへの配慮と、韓国との向き合い方は、なぜこれほど違うのか

市川速水 朝日新聞編集委員

徴用工の厳しい環境に触れない外相コメント

 そして11月29日、韓国大法院(最高裁)は、三菱重工業に対し、広島と名古屋の軍需工場で働かされた元徴用工や元女子勤労挺身隊員らに損害賠償を命じる判決を出した。

拡大韓国大法院(最高裁)判決について、記者団の取材に応じる河野太郎外相i=2018年11月29日、外務省
 河野太郎外相はすぐに談話を発表し、「国際裁判や対抗措置も含め、あらゆる選択肢を視野に入れ毅然とした対応を講ずる」と述べた。対抗措置という文言を初めて入れ、より対決姿勢を打ち出した。

 しかし、原告らの当時の厳しい環境に対するコメントはなかった。

 「志願を勧められて行ってみると給料は未払いのまま過酷な労働を強いられた」「鉄をハンマーなどでたたき割る重労働をさせられた」などの実態は、日本での裁判時に認定され、争いのないものだ。

 河野外相がもし、政府としての主張をする前にひと呼吸置いて、原告に「戦前、戦中はご苦労かけました」とか「不自由をおかけしました」とか呼びかけていたら雰囲気は違っていたはずだ。それから「でも、」と政府の立場を主張してもいいようなものを。

 ましてや植民地統治下で共に戦った「日本人」へ慰労の言葉がなぜなかったのか。

植民地統治下の「日本人」に寄り添う気持ちが見られない

 この日本の、一見正しいかもしれないけれど、あまりに激しい反応に「いやな感じ」を覚えるのだ。

 二つのとげとげしさで共通しているのは、戦争当時、敵でもなかった植民地統治下の「日本人」という立場や、歴史に翻弄されてきた個人のヒストリーに寄り添う気持ちが見られないことだ。

 そもそも、これは戦争被害者が日本企業を訴えた裁判だ。なぜ外相が真っ先にコメントするのか。原告の訴える請求権が、1965年の日韓請求権協定で解決した請求権の範囲に含まれるから、条約・協定の問題だからだ、というのが理由だろうということは想像がつくが、日本政府が訴えられたわけでも敗訴したわけでもない。

 また、「個人の請求権は消滅していない」という今回の韓国の一連の法理は、日本政府も戦後、一貫して主張してきたものであり、日本が対外的、対内的に戦後補償の道をふさぐ「道具」として利用してきたものだ(『徴用工判決めぐる「いやな感じ」の正体』参照)。

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筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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