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百田尚樹著「日本国紀」から憲法を考える(前編)

内山宙 弁護士

17条憲法は民主主義なのか?

 まず、17条憲法です。

 日本書紀に全文が掲載されていますが、みなさんご存知なのは、第1条の「和(やわら)ぐを以って貴(たふと)しとし、忤(さか)ふること無きを宗(むね)とせよ」(岩波書店「日本書紀(四)」96〜104ページから引用。以下同じ)ではないでしょうか。その後に、みんなで議論しようということが書かれているので、百田氏は、17条憲法は民主主義だとしています。

聖徳太子墓=大阪府太子町拡大聖徳太子墓=大阪府太子町
 また、仏教を敬うことや天皇に従うことよりも先に、「和ぐを以って貴し」とすることが来ているのが凄いとも書かれています。当時は宗教や天皇の権威が非常に大きく、それを最初に書いてもよかったのに、それよりも前に和することをもって来ているからだということだそうです。

 しかし、条文の順番で規定の優先順位が決まるというのなら、みんなで議論せよというのは第17条(「夫(そ)れ事独(ひと)り断(さだ)むべからず。必ず衆(もろもろ)と論(あげつら)ふべし」)に書いてあり、第1条に書いてあるのは、協調して議論すると上手くいくのだという効果だけです(「上(かみ)和(やわら)ぎ下(しも)睦(むつ)びて、事を論(あげつら)ふに諧(かな)ふときは、事理自(おの)づからに通ふ。何事か成らざらむ」)。百田氏の論によれば、民主主義が一番後回しということになってしまいかねません。

 第16条に、民は使役される対象だ(「民を使うに時を以ってする」)と書かれているのも、17憲法を民主主義と言うのに抵抗を感じる点です。使役される対象が議論に加われるとは思えません。民主主義というのは、主権者たる国民の多数の意思が国政に反映されていく仕組みです。17条憲法では、「みんなで議論して決める」と言っても、支配される者の意思が反映していくことは想定されていません。

 また、17条憲法の第3条では、天皇のいうことは必ず従え、と書いてあります。天皇主権を定めているということができるでしょう。とすれば、あくまでも天皇を頂点とした支配階級の中で議論するだけのことと考えられ、民主主義ではありません。

 最近では、稲田元防衛大臣が、17条憲法は民主主義を定めたと言っています。この方は弁護士でもあるので、ちょっと大丈夫だろうかとクラクラしました。

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筆者

内山宙

内山宙(うちやま・ひろし) 弁護士

1974年、愛知県生まれ。中央大学法学部卒、成蹊大学法科大学院修了。裁判所勤務の傍ら夜間の法科大学院に通い、2007年司法試験合格。08年弁護士登録(静岡県弁護士会)。静岡県弁護士会・憲法委員会委員、日弁連・法科大学院センター委員。エンタメ作品を題材とした憲法の講演を多数回開催している。著書に『これでわかった!超訳特定秘密保護法』(岩波書店・共著)、小説『未来ダイアリー もしも、自民党改憲草案が実現したら?』(金曜日)などがある。

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