メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

大政変「非自民」細川政権の誕生と挫折

平成政治の興亡 私が見た権力者たち(5)

星浩 政治ジャーナリスト

衝撃を与えた「新党さきがけ」の結成

自由民主党を離党した当選1、2回の前代議士10人が「新党さきがけ」を結成した。左から井出正一、岩屋毅、佐藤謙一郎、園田博之、武村正義、田中秀征、鳩山由紀夫、渡海紀三朗、三原朝彦、梁瀬進の各氏 =1993年6月21日拡大自由民主党を離党した当選1、2回の前代議士10人が「新党さきがけ」を結成した。左から井出正一、岩屋毅、佐藤謙一郎、園田博之、武村正義、田中秀征、鳩山由紀夫、渡海紀三朗、三原朝彦、梁瀬進の各氏 =1993年6月21日

 小沢氏らの造反に加えて、政界に衝撃を与えたのが、自民党の武村正義氏ら若手の離党だった。武村氏や鳩山由紀夫、田中秀征、園田博之、三原朝彦各氏ら計9人は、党の方針に従って内閣不信任案には反対した。だが、不信任案が可決された直後に、不信任案に賛成した梁瀬進氏を加えた10人で離党を表明。6月21日には、武村氏を代表とする「新党さきがけ」を結成した。

新生党結党の記者会見をする羽田孜党首(是前列左から2人目)ら。壁には「新生党」の看板が掲げられている=1993年6月23日拡大新生党結党の記者会見をする羽田孜党首(前列左から2人目)ら。壁には「新生党」の看板が掲げられている=1993年6月23日
 小沢氏らにすれば、不信任案には賛成したものの自民党離党をためらっているうちに、新党さきがけに先を越される格好となった。小沢氏ら35人が自民党に離党届けを提出したのは22日。「新生党」という党名を決めたのは23日だった。

 数カ月前、私は自民党竹下派の若手議員だった鳩山、三原両氏らと居酒屋で一杯やりながら話をする機会があった。「一致結束、箱弁当」が合言葉で鉄の結束を誇っていた竹下派だったが、二人は「派閥の古い体質は嫌になる」「このままでは自民党の未来はない」とぼやいていた。二人が「新党さきがけ」に加わり、さらに鳩山氏が16年後に首相にまで上りつめるとは、想像もできなかった。

小沢氏の多数派工作に自民党は打つ手なし

 総選挙は7月4日公示、18日投票と決まった。結果として、これが中選挙区制のもとでの最後の総選挙となった。

 定数511を争った選挙の結果は次の通りだ。

自民党  223
社会党    70
新生党    55
公明党    51
日本新党 35
民社党    15
共産党    15
さきがけ 13
社民連     4
無所属    30

 自民党は過半数の256を大きく割り込んだが、改選前議席の222はかろうじて1議席上回った。18日、開票速報が次々と流れている時、宮沢首相は改選議席を上回ったことで自信を取り戻していた。

 秘書に電話したら「総理は辞める気などさらさらありません」 という。だが、梶山静六幹事長は、首相と幹事長が党分裂の責任をとって辞任し、自民党が新総裁・幹事長を選べば、日本新党などとの連立政権は可能と見ていた。

結党以来の野党に転落した自民党の新総裁に選出され、対立候補だった渡辺美智雄氏(左)と握手する河野洋平氏=1993年7月30日 拡大結党以来の野党に転落した自民党の新総裁に選出され、対立候補だった渡辺美智雄氏(左)と握手する河野洋平氏=1993年7月30日
 自民党が選挙後の対応を決めかねていた間に、小沢氏は活発に動いた。7月22日夜、小沢氏は、参院から衆院に鞍替え当選した日本新党の細川護熙代表と会談し、非自民連立政権の首相を受けるよう提案。細川氏は受け入れた。そこから、社会、新生、公明、民社、日本新、さきがけ各党による非自民の連立政権樹立に向けた動きが急展開する。

 宮沢首相は、党内情勢から退陣やむなしと判断。22日に退陣を表明した。後継総裁に後藤田正晴副総理兼法相を担ぐ動きが表面化する。さきがけの武村代表は、自治省の先輩である後藤田氏に近く、自民党としては、さきがけを抱き込むには「後藤田首相」が好都合という判断だった。

 しかし、後藤田氏は高齢を理由に総裁選出馬を拒否する。後継総裁は河野洋平官房長官と渡辺美智雄前外相の間で争われ、河野氏が勝利する。自民党は、小沢氏の多数派工作の前に打つ手がなかった。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

星浩の記事

もっと見る