2018年12月06日
11月20日(火) 午前中、「報道特集」の定例会議。今週のネタはいくら何でもゴーン逮捕で何があったのかだろう。午後一に赤坂でA弁護士と打ち合わせ。
その後、文京シビックセンター・スカイホールで講演。会場がちょうど満杯になる。ゴーン・ショックの背景事情など多少わかってきたことも含めて話をする。その後、T弁護士らと打ち上げに。弁護士さんたちとのつながりは仕事柄必ずどこかでできてしまうものだが、この夜は思わぬ過去のエピソードを聞くことになって、とてもよかった。過去の大事件にまつわることがらで、まだまだ自分が知らなかったことがたくさんある。
11月21日(水) 早起きをしてプールに。最近運動不足で太り気味。心身の状態をうまくコントロールできていないのだろう。いつもの半分で泳ぐのをやめる。
午後、アメリカ映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』の試写会。イラク戦争当時の大量破壊兵器報道が大量に流布した中で、唯一、ナイトリッダーという新聞社が果敢に、イラクが大量破壊兵器を保持している(保持しようとしている)との情報が、ラムズフェルド国防長官やウォルフォウィッツ国防副長官ら好戦派によって操作、ねつ造されたものであることを報道し続けたというストーリーを映画化したものだ。この時、僕はワシントン支局に勤務していたので、NYタイムズのジュディス・ミラーが一面トップで「フセインが核開発を目論んでいる」だのの「スクープ記事」なるものを出し続けていたことを鮮烈に記憶している。
ジュディス・ミラーは、実際に会ってみるとどこか「妖気」を漂わせているような女性記者で、イラク国民会議なる親米傀儡組織のトップの情報を垂れ流していたことが後日判明して、結局米中央情報局(CIA)の情報漏洩事件でNYタイムズを退職するのだが、当時の編集責任者らも同罪だと僕は思っていた。イラク戦争開戦前夜、アメリカはひどいメディア状況だった。日本のメディアもそれに引っ張られていた。ただこの映画は、ナイトリッダーの2人の主人公の記者の姿をヒーローのように描いているだけで、その取材活動ぶりもいかにも底が浅く、大いに不満が残ったというのが率直な感想だ。字幕が池上彰氏監訳というのも訳がわからない。まあ、いいや、そんなこと。当時のネオコンたちが何の責任も問われずに生き残った現実をこそ直視しなければならない。ジュディス・ミラーは今どこでどうしているのだろう。
東京拘置所のゴーン会長のもとにフランス大使が面会に行ったそうだ。ゴーン会長も3食、東京拘置所から出されためし(官弁)を食べているのだろう。その姿を想像する。
11月22日(木) 早朝、開館前の森美術館で『カタストロフと美術のちから展』の取材。キュレーターのインタビュー。
その後、横浜のみなとみらいにある日産本社へ。ゴーン氏ら2人の解任、代表権を外すことを決める臨時取締役会の取材。もちろん取締役会は非公開なので、本社ビルの前でひたすら待つだけの取材だ。正午に本社ビル前に行くと、すでに50人ほどの報道陣が群れをなしていた。カメラマン、中継スタッフ、リポーター、記者たちがかたまっている。何だか同種の動物の群れみたいだ。そして僕もその群れのなかの一匹というわけだ。見るとそこからちょっと離れた一画に外国メディアが陣取っている。聞くと、ブルームバーグやCNBCといったアメリカ経済メディアのリポーターたちだった。昼食時だったので、駅に近い通路で日産社員とおぼしき人たちにインタビューを試みたが、20人くらいに声をかけたが誰一人として答えてくれなかった。逆の立場なら僕もそうしただろう。それくらい今回のゴーン・ショックは強烈だ。
取締役会は午後4時か4時半頃に始まるだろうとの情報が入ってくる。その間、以前の取材で面識のあったフランスのフィガロ東京特派員とのアポ取りなどを頼む。フランスのメディアのこの事件の受け止めは、日本のそれとは当然のごとく異なる。ひとつは
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