メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

本当は怖い国民投票 その前にやるべきこと

冷静な言論空間をつくるために「ランダム・アセンブリ―」の活用も一策

曽根泰教 慶應義塾大学名誉教授 日本アカデメイア運営幹事

冷静な言論空間を確保する試み

 国民投票をおこなう際には、なにより冷静な言論空間を確保する必要がある。問題は、誰がどのようにそれを確保するかである。そこで参考なるのが、そのために様々な試みを行ってきた研究者や専門家の経験であろう。

 この11月9日、10日にニューヨークで、「憲法作成におけるランダム・アセンブリーの役割」と題したワークショップが開かれた。民主主義と憲法作成や選挙支援をしてきたNPOの「インターナショナルIDEA」、スタンフォード大学の熟議民主主義センター (CDD) と国連のUNDPの共催であった。

 ワークショップに集まったのは、様々な「ランダム・アセンブリー」を手がけてきた専門家たち。熟議とかミニ・パブリックスとかでくくられることがある「ランダム・アセンブリー」は、いわば無作為で選ばれた人を集めて行う調査である。憲法改正や国民投票においてそれらを利用できないかということがあらためて検討された。

 「ランダム・アセンブリー」の具体例としては、市民議会(Citizens Assemblies)のグループ、ガスティル(ペン・ステート大学教授)の「市民主導のレビュー」(Citizen’s Initiative Review)、フィシュキン(スタンフォード大学教授)や私などがやっている「討論型世論調査」(Deliberative Polling) などが挙げられる。使っている国は、アイスランド、アイルランド、デンマーク、カナダ、オランダ、イギリス、日本(これは私が報告した)などである。

日本で行われたエネルギー選択に関する討論型世論調査。小グループ討論では参加者たちが互いの意見を発表しあった=2012年8月5日、東京都港区拡大日本で行われたエネルギー選択に関する討論型世論調査。小グループ討論では参加者たちが互いの意見を発表しあった=2012年8月5日、東京都港区
 これまで実際に行われた「ランダム・アセンブリー」を見てみると 、まず ブリティッシュコロンビア州、オンタリオ州、オランダでの選挙制度改革に関するものがある。日本と韓国では、政府によるエネルギー選択に関する討論型世論調査があった。アイスランドでは、憲法会議が直接投票で選ばれた25人の一般国民から構成され、憲法改正案の起草を行った。アイルランドでも、無作為に選ばれた市民と任命された政治家からなる憲法会議が憲法改正案を提言した。

 モンゴルでは、すでにDPを法制化し、憲法改正においてどの項目を対象とするかの選択に利用している。出席予定だったモンゴルの官房長官は国会があるために欠席したが、代わりにフィシュキンが報告した(10月に開かれたウランバートルでの「アジアの熟議民主主義の会議」には、フィシュキンも私も出席した)。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

曽根泰教

曽根泰教(そね・やすのり) 慶應義塾大学名誉教授 日本アカデメイア運営幹事

1972年慶應義塾大学大学院修士課程修了後、同大学法学部助手、85年同学部教授、90年総合政策学部教授、94年より政策・メディア研究科教授。2018年慶應義塾大学名誉教授。海外歴:イェール大学客員研究員、オーストラリア国立大学客員研究員、エセックス大学客員教授、 ハーバード大学客員研究員など。主な著書に、『日本ガバナンス』(東信堂、2008)、『「学ぶ、考える、話しあう」討論型世論調査』(共著、ソトコト新書、2013) など

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです