山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授
1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
色あせかけている県民投票。市民と権力のせめぎ合いの行方は……
玉城デニー沖縄県知事は2018年11月27日、米海兵隊普天間飛行場(宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古沿岸の埋め立て工事の賛否を問う県民投票を、来年2019年2月24日に行うと発表した。
賛成か反対かを問う県民投票に、法的拘束力はない。しかし、県民投票に関する条例は、過半数を得た方の結果が沖縄県の有権者数の4分の1以上に達した場合、知事は「結果を尊重しなければならない」と定めている。
26歳の若者が代表を務める「『辺野古』県民投票の会」が、県民投票を実施する条例の制定を求め、請求に必要な法定署名数の4倍に当たる9万2848筆(有効署名数)を集めて、沖縄県に提出したのが2018年9月5日。
翁長雄志知事が8月8日に急逝したのを受け、沖縄県知事選挙が実施され、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対するデニー氏が、移設を進める安倍晋三政権が推す候補に8万票差で当選したのが9月30日。
県議会にて与党の賛成多数で県民投票条例が可決され、「辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票条例」が公布・制定されたのが10月31日。以上の経緯を沖縄の地で間近に観察してきた立場からあらためて振り返れば、今回、県民投票を実現させたのは、まぎれもなく市民の力だった。以下、具体的にみていきたい。